大久保佳代子、あまりにうかつな「ホステス」発言に見る時代遅れの感覚とは
とうとうと言うべきか、やっとというべきか、緊急事態宣言が出されましたが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
夜の街で感染したと思われる患者が多いことから、3月30日に小池都知事が「バー、ナイトクラブなどの出入りを控えて」と会見しました。
ユリコは都知事で、都民の安全を守ることも仕事のうちですから、呼びかけは正しいでしょう。ですが、「行くな」と言われた側からすれば、営業妨害以外の何ものでもない。
一方、医師や看護師などの医療職、保育士さんはなんの特別手当も出ず、感染リスクの高いまま、当然のように働かされています。東京都医師会は政府に先立って「医療的緊急事態宣言」を発表しました。これ以上、患者数が増えれば、病床数が足りなくなるそうですから、やはり感染を食い止めなければなりません。
松本人志の突然の「ホステス批判」は何を意味するのか?
新型コロナウィルスは人と接することで感染するリスクが高まるのですから、単純に考えれば、みんなが家にいればいいわけで。そのために、ユリコが名指ししたバーやナイトクラブだけでなく、会社にいかないでいいように、国が補償すればいいと思うのです。
感染患者が減れば、医療職や保育士さんにかかる負担も減りますし、事態の収束も早くなって、みんなにメリットがある。諸外国にできることが、どうして日本にはできないのか……と歯がゆい思いをしているのは私だけではないでしょう。
4月5日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)でも、当然この話題に触れます。
政府は「減収後の月収が、一定の基準を下回る世帯を対象とし、1世帯30万現金給付案」を打ち出しています。同番組アシスタント・山崎夕貴アナの夫、おばたのお兄さんはコロナの影響で、仕事がキャンセル続き。収入が激減していることから、30万円をもらえる「一定の基準」に興味があると話していました。
ここで司会の松本人志が「水商売のホステスさんが仕事を休んだからといって、普段のホステスさんがもらってる給料を、我々の税金では、俺はごめん、払いたくないわ。やっぱり最低レベルで決めないと」と言い出します。
東野浩二が「食べるものがない、お子さんがいらっしゃるとか、そこを助けないといけない」と重ねていたので、文脈から考えるのならホステスという言葉は、“高給取り”の代名詞として使ったのだと思います。
でも、ホステスがみんな高給取りとは限らず、東野浩二が言ったように「食べるものがない、お子さんがいる」という境遇のホステスだっていると思うのです。
反対に高給取りのホステスの場合だとしても、今はクラブでは「誰も働いてはいけない時期」なわけですから、補償を求めるのは当然ではないでしょうか。
バーやナイトクラブという職業から、松本はホステスという言葉を連想したのかもしれませんが、このホステスという言葉は、わりと意味深だなと思うことがあります。
ここで思い返したい、福田和子という女性の話
1982年に起きた松山ホステス殺害事件をご存じでしょうか。高級クラブのナンバー1ホステスだったYさんを、同僚の福田和子が殺害し、死体を山中に埋めます。
和子は結婚しており、4人の子どもがいましたが、その一方で愛人もいました。愛人は、和子を独身だと思っていたそうです。
Yさん宅の荷物を、夫に愛人との逢瀬用のアパートに運ばせたというからたいしたものです。警察の捜査の手が自分に伸びてきていることを感じた和子は逃亡を開始します。その後、約15年間、オトコを変えながら逃げ続けますが、時効成立21日前に逮捕されたのでした。
犯人逮捕まで、どうしてこんなにも時間がかかったのか。その原因として、初動捜査の遅れがあげられます。
結婚を控えていたYさんが失踪し、部屋の中のものもすべて無くなった。結婚前の女性が婚約者にも何も言わずに、消えてしまうなんて明らかにおかしい。
ご家族は事件性を訴えますが、警察は「違うオトコと駆け落ちをしたのではないか」と取り合わなかったと週刊誌で読みました。
福田和子の関与が明らかになってきても「ホステスだから、そんな大したことはできないだろう」と甘く見ていたそうで、結果的に整形されて遠くに逃げられてしまうわけです。
たぶん多くの人が持っている「ホステス」の先入観
このように、ホステスが時に高給取りの代名詞としてやり玉に上げられたり、またある時にはオトコにだらしがなく、頭がまわるはずがないというイメージを持たれるのは、「ホステスが簡単な仕事」という先入観を持っている人が多いからではないでしょうか。
ざっくり言うと、ホステスは指名が増えれば給料も増えるという仕組になっていると言えるでしょう。となると、稼ぐには、多くの男性に指名してもらわないといけない。たとえ自分が嫌いなタイプでも、合わない男性でも、楽しい時間を提供しなければいけないのです。
一般的な傾向なのか、それとも私の友人の周囲だけなのかは不明ですが、「客はヤると店に来なくなる(店でお金を使わなくなる)」そうなので、そのあたりの距離もうまく取らなければいけない。客が飲み代を踏み倒したりすると、自分が払わなければいけなくなってしまうので、人を見る目もいるでしょう。
プロとして、男性に夢を見させるというお仕事ですから、決して簡単な仕事ではないはず。時々、「若いオンナなら、キャバクラや風俗で働け」的なことを言う人がいますが、勤めることは簡単でも、安定して稼ぐことができる人は少ないのではないでしょうか。
このようにホステスは専門性の高い仕事だと思います。ですから、本職でない人も安易にその名前で印象づけるのはどうかなと思うのです。
本業でない人を「ホステス」に例えるのはアリなのか?
元フジテレビアナウンサー、河野景子がフリーになったとき、「フジテレビでチーママと呼ばれていた」「面倒を見たい(愛人にしたいという意味)と言われた」とバラエティー番組で言っていたことがあります。
おそらく、チーママに匹敵する気配りがあって、オジサンをメロメロにする色香があると言いたかったのだと思いますが、「この人、アナウンサーなのに、会社で何やってんだ」「女子アナっておじさんに好かれるのが仕事なの? そうしないと仕事もらえないの?」と思う人もいるはず、というか私は思いました。
最近では、4月2日放送の「アメトーーク」(テレビ朝日系)の「みちょぱスゴイぞ芸人」の回に出演したオアシズ・大久保佳代子が、みちょぱについて「ジジイを転がしている感を見せずに、アシストができる、あれができるって最高級のホステスですよ」と評しました。
みちょぱの、梅沢富美男や長嶋一茂、石原良純といった気難しいオジさんにかわいがられつつ、かといって溺愛されるわけでもない、その距離感のうまさを「最高級のホステス」という言葉に置き換えたのだと思います。
が、大久保発言を「ホステスさんみたいに、オジサンを転がせるのが、いいタレントの条件ってこと?」と疑問を持った若い人もいると思います。
2020年、セクハラの概念は同性でも持ったほうがいいのかも
河野景子の場合、自分で自分のことを水商売の女性と言っているわけですし、彼女がフリーになった90年代はセクハラという概念があまりない時代でしたからアリでしょう。
しかし、今の時代に軽い気持ちで“ホステス”という言葉を使うと、大久保サンが「女性タレントはホステス性が大事」と言ったかのように解釈されかねません。モデルやバラエティータレントとしてキャリアを積み上げているみちょぱも、ホステス性でのし上がってきたかのように思われたらソンでしょう。
「婦人公論」(中央公論社)の「清水ミチコの三人寄れば無礼講」で、「今の女芸人はみんな優しい」と清水ミチコに話を振られた大久保サンは、「それはやっぱり、パイオニアである清水さんや野沢直子さんの世代が優しかったからですよ」と清水ミッチャンの功績をたたえています。
後輩は先輩を真似しますから、先輩が優しければ後輩も優しくなると大久保サンは言いたいのでしょう。
大久保サンはすでにバラエティーのトップにいるわけですから、お笑い以外の人にも優しさをかける番ではないでしょうか。さらに、女性が若い女性に性差別的とも取れる言い方をしないかを注意する必要性についても、考えさせられたのでした。
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