「汗をかかない人」ほど熱中症のリスクが高まる意外な理由って?医師が解説

こんにちは。「予防医療」のスペシャリストで、医師の桐村里紗です。

この連載では、人生100年時代の折り返し地点、50歳になる前にやめたい悪習慣についてお伝えしていきます。

ジメジメと湿度が高い季節、ベタベタ不快でニオイの原因になる汗はなるべくかきたくない!と、汗を止めようとする人が多発します。でも、今年はマスク着用も加わって、熱中症リスクをますます高めてしまうため、汗をかかないことはリスキーです。

【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」#33

この夏よりいっそう熱中症リスクが上がる理由とは

人と接する際や密度が高い場所では、マスク着用が求められる今年の夏。

 

熱中症リスクが高まるため、屋外で2メートル以上距離が保てる場合は、マスクを外し、気温が高い日には十分注意するように厚生労働省も注意喚起しています。

 

そうは言えども、多くのシーンでマスクを着用しなければならず、暑く苦しい夏を迎えそうな予感がします。

熱中症にならないように十分対策が必要ですが、盲点になっているのは、「汗をかかないこと」「汗をかけないこと」です。

 

汗をかかない人の方が熱中症になりやすい

人は、全身にあるエクリン汗腺という汗の管から、血液を濾過して汗をかき、それを蒸発させることで体温を下げています。

 

元々汗をかきにくい人や、なるべく汗をかかないように努力している人は、汗をかく働きが鈍ってしまい、気温が上がって体温が上がっても、汗をかけなくなってしまいます。

 

すると、熱が逃げることなく体にこもり、体温が上がったままになってしまいます。

 

これは、熱中症の中等度の状態で、「うつ熱」と言います。

 

放置すると意識障害も引き起こす「うつ熱」

うつ熱の状態では、頭痛がしたり、フラフラしたり、ボーッとしたり、ちょっとおかしいなと感じます。

 

この時にしっかり体温を下げるように体を冷やさないと、重度の熱中症となり、意識がなくなってしまう危険な状態になりかねません。

 

汗をかきづらいお子さんや高齢者に多いものですが、普段から汗をかかないオトナサローネ読者層の皆さんでも十分に起こりうるので注意が必要です。

 

汗をかく習慣がないならより注意、脱水症の原因にも

汗を普段からかかない人は、体が塩分不足を伴う脱水症にもなりやすいため、より注意が必要です。

 

こんな人が、蒸し暑い部屋にいると、じっとりベタベタの張り付くような汗をかきますが、この汗は蒸発しづらいため体温を下げる働きが弱く、塩分を多く含むため、体は塩分不足になります。

 

体の塩分濃度が下がり、電解質バランスが崩れて、細胞から水分が奪われて脱水が進行してしまいます。

 

汗をかかない人ほどクサイ?ベタベタ汗臭の原因にも

普段から汗をかいている人は、汗腺の機能が発達し、汗として排泄される液体の99%以上が水分で、塩分をほとんど含みません。

この汗は、さらさらでニオイも発生しづらい、「良い汗」です。

 

ところが、普段から汗をかかない人は、感染の機能が低下し、汗に排泄されず、血液に戻されるはずの塩分を多く含む汗になります。

 

この汗は、ベタベタでしょっぱく、放置するとニオイの原因にもなる「悪い汗」です。

 

結論、汗はかいておいた方がいい

結論として、汗は、しっかりかいた方が体のためです。

1日1回はしっかりと汗をかく習慣を持つことをお勧めします。

 

水分をしっかり取った上で、有酸素運動や入浴習慣を持ち、サラサラの汗がかけるようになることです。
いずれも、20分程度は行うことで、だんだん汗をかけるようになります。
岩盤浴やホットヨガなども、汗腺を回復させるために効果的です。

 

こうしてかく汗は、かいても水分がほとんどで汗臭の原因にもなりにくいため、ニオイ対策にもなります。

 

熱中症を避けるマスク着脱ルール

厚生労働省がお勧めする、「新しい生活様式」でマスクを外して良いのは、こんな時です。

 

  • 屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合

 

そして、マスクを着用している時には、

  • 負担の強い作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心掛けること。
  • 適宜、周囲の人との距離を十分にとれる場所に移動して、マスクをはずして休憩すること。

 

さらに、従来からの熱中症対策をしっかりすること。
などと、されています。

これにもう一つ、「汗をかけるようにしましょう!」ということを、ここで付け加えておきたいと思います。
今年の夏を何とか乗り切っていきましょう。

 

【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」、週1回、土曜の夕方に配信!】

文/内科医・認定産業医 桐村里紗

tenrai代表取締役医師。1980年岡山県生まれ。2004年愛媛大学医学部医学科卒。内科医・認定産業医。治療よりも予防を重視し、「ヘルスケアは、カルチャーへ」というコンセプトを掲げ、新しい時代のヘルスケアを様々なメディアで発信している。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」他メディア出演多数。著書『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(光文社新書)他。

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