これって貧血?めまい?区別しにくい不調は何科に相談すればいい?

こんにちは。「予防医療」のスペシャリストで、医師の桐村里紗です。

この連載では、人生100年時代の折り返し地点、50歳になる前にやめたい悪習慣についてお伝えしていきます。

「貧血」「めまい」は、よくある症状ですが、区別がつきづらく、病院に相談したいけど何科に行けばいいかわからない。受診しても「うちじゃないから他科に行って」などと冷たくあしらわれてしまう。というお声をよく聞きます。

これらの区別をつけることは、自分の体をよく知る一歩です。

【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」#46】

1・貧血・めまいの区別は?
2・「立ちくらみ」は「貧血」ではない
3・「貧血」は自覚症状ではわからない
  ■「貧血」の症状は不定愁訴
  ■月経がある女性の貧血
  ■貧血の原因は様々
4・「めまい」はクルクルかフワフワかで区別
  ■回転性めまいとは?
  ■浮動性めまいとは?
  ■更年期のめまい

1・貧血・めまいの区別は?

「貧血」「めまい」これらは、医学的には明確に定義が区別されているのですが、日常使いする用語としては、あまり区別されていないと思います。

「ふらつき」「立ちくらみ」などの表現も加わると、ますます混迷を極め、判断が付きづらいものですね。

実際に、原因となる病気は、それぞれに扱う科が違う為、適切な科を受診しなければ、検査や治療を受けることができません。

それぞれの定義をはっきりとして、区別をつけた上で、自分がどれに当てはまるかを考えてみてください。

2・「立ちくらみ」は「貧血」ではない

立ち上がる際にふらついたり、急に目の前が暗くなったりした際に「貧血が起きた」と表現することがあると思います。

 

これは、実際には「貧血」ではなく、「立ちくらみ」「脳貧血」などと呼ばれる状態で、医学的には「起立性低血圧」に当てはまります。

 

立ち上がる際には、血管を縮め、心拍数を上げて血液を上に押し上げないと、脳から血の気が引いてしまいます。すると、一時的に脳に血が足りなくなり、目の前が暗転したり、倒れたりしてしまいます。

 

若い女性や高齢者、糖尿病がある人、運動不足の人に起こりやすいもので、大きな原因はないことが一般的です。ただし、パーキンソン病や多系統萎縮症などの中枢神経の基礎疾患が隠れている場合もあります。

 

急な発症であったり、あまりにも頻度が高い場合には、相談する窓口は「神経内科」です。

 

血圧が保てない場合に、心不全や重症の不整脈など心疾患が原因の場合もあります。この場合は、循環器内科での精密検査が必要です。

 

3・「貧血」は自覚症状ではわからない

「貧血」は、血液検査をしなければわからない病態で、症状だけで「貧血」と言い切ることはできません。

 

血液検査で、酸素を運搬する赤血球の中のヘモグロビンと呼ばれる赤い色素が減少している場合、「貧血」と初めて診断されます。

 

貧血の自覚症状や原因は様々です。

 

■「貧血」の症状は不定愁訴

自覚症状は、急激に貧血が起きた場合は、動悸や息切れなどが急に起きます。ただし、慢性に進行する場合は、体が適応しようと頑張るため、ほとんどが無自覚です。不調が起きていても、それが貧血症状とは結びつきません。

  • 立ちくらみ

脳に酸素を運ぶ赤血球自体が不足しますので、立ちくらみが起きる場合もありますが必須ではありません。むしろ、その他の不定愁訴の方が多く出現しますが、通常は「貧血」とは結びついていません。

  • 倦怠感
  • 疲労感
  • 肩こり
  • 頭痛
  • 不眠
  • 気力低下・抑うつなど精神症状
  • 顔面蒼白 など

■月経がある女性の貧血

更年期までの女性に一般的なのは、鉄が不足して起こる「鉄欠乏性貧血」。月経が完全に上がるまでは、ほとんどの女性は定期的な出血で「潜在性鉄欠乏(かくれ貧血)」と呼ばれる状態です。これが、多くの不調の原因になっています。

 

「潜在性鉄欠乏(かくれ貧血)」の診断は、一般的な病院では難しく、分子整合栄養療法(オーソモレキュラー療法)を行うクリニックで、「フェリチン」と呼ばれる体内の貯蔵鉄を調べる必要があります。

 

詳しくは『40代は「鉄」が足りない!検査はどう受ける?サプリは何を選べばいい?|医師に聞く更年期#2』

■貧血の原因は様々

それ以外にも、貧血の原因は様々です。

  • 再生不良性貧血、白血病など血液疾患
  • ビタミンB12や葉酸の不足
  • 赤血球が崩壊する溶血
  • 赤血球を壊す自己免疫疾患
  • 腎不全
  • 感染症や慢性炎症
  • 赤血球の形態異常など

様々な原因があります。貧血は、まず、血液検査で指摘されるところから始まります。健康診断で「貧血」と指摘された上で、原因を調べることになります。

 

まずは、一般的な「内科」を受診し、貧血の原因を探ります。

 

その上で、血液疾患が原因であれば、血液内科。
ビタミンの吸収不良があれば、胃に原因がないか調べるために消化器内科。
腎不全が原因であれば、腎臓内科。
など、原因ごとの受診先が決まります。

 

4・「めまい」はクルクルかフワフワかで区別

「めまい」は、様々な原因があるので、医師にとっても診断に悩む症状です。

まず、区別すべきは、クルクルか、フワフワか。

  1. 回転性めまい
    目の前がクルクル回転する異常な感覚。狭義の「めまい」。
  2. 非回転性めまい
    浮動性めまいとも呼び、体がフワフワと左右前後に揺れて感じる視覚運動体験。
    いわゆる「ふらつき」にあたる。

■回転性めまいとは?

頭を動かしていないのに、世界がクルクルと回転するのが「回転性めまい」です。
これは、耳の中にある平衡感覚を司る器官である三半規管や耳石、また、前庭神経の急性障害、小脳の障害によって起こります。

耳鼻科に関連する回転性めまいを起こす代表的な疾患としては、

  • 良性発作性頭位変換性めまい症
    頭の位置を変えると回転性めまいが起こる。加齢や動脈硬化、運動不足で起こりやすい。
  • メニエール病
    ストレス、睡眠不足等により内耳のリンパ液が増えて起こる。耳鳴りや耳閉感もある。
  • 前庭神経炎
    風邪の後に前庭神経に炎症が残る。

中枢神経に関連する回転性めまいは、救急受診を必要とすることが多いものです。

  • 脳卒中:脳梗塞・脳出血
    平衡感覚を司る小脳の血管の梗塞や出血に伴い、急激に激しい回転性めまいが起こる場合があります。
    この場合、症状は急激で「いつから起きた」という発症起点が明確に自覚できます。
    救急車を呼んで救急受診が必要です。
    脳梗塞は、神経内科。脳出血は、脳外科の領域になりますので、いずれもがある病院へ搬送してもらいましょう。
    動脈硬化によりじわじわと血流が低下して「椎骨動脈底動脈循環不全症」が起こると、じわじわとめまいが起こるようになります。一時的に脳梗塞のような症状が起こる一過性脳虚血発作が起こることもあります。こうした場合も、脳外科や神経内科でのMRI/MRAなどの検査が必要になります。
  • 脳腫瘍
    小脳腫瘍や聴神経腫瘍などの脳腫瘍により、回転性めまいが起こる場合もあります。
    急激な発症というよりは、「最近、よく回転性めまいがするなぁ」という感じで発症することが一般的です。
    画像検査や耳鼻科的検査によって、原因を精査する必要がありますから、総合病院を受診すると耳鼻科、神経内科、脳外科など、必要な科で順番に検査をして原因を特定することができます。

■浮動性めまいとは?

浮動性のめまいは、フワフワと地に足がつかないような浮動感を伴います。
回転性めまい以上に、原因は、軽症から重症まで、多岐に渡ります。

  • 耳鼻科疾患
    耳が原因で起こる回転性めまいが急性期を過ぎ、慢性期には移行した場合に、浮動性めまいになることがあります。
    回転性と浮動性、いずれのめまいも起こる場合には、耳鼻科受診をしてみましょう。
  • 中枢神経
    脳腫瘍や動脈硬化に伴う脳血流障害(脳虚血性変化・脳梗塞など)も原因になります。
    梗塞が生じた場合は、回転性と同じく、急激な発症となりますので、救急受診が必要です。
    椎骨動脈底動脈循環不全症などの動脈硬化に伴う虚血では、浮動性めまいも起こります。
    糖尿病や脂質異常症などの基礎疾患を伴うことが多いため、内科での治療と並行する必要があります。
  • 自律神経失調
    血圧を保つために大切な自律神経の働きが悪くなると、血圧の調整障害などから浮動性のめまいが起こる場合があります。
    抑うつなどの心理的な影響やストレス、運動不足や生活習慣の乱れなどにより起こります。

■更年期のめまい

自律神経失調が起こりやすい更年期には、浮動性めまいを感じやすくなります。
血圧の調整障害から、立ちくらみも起こりやすくなるでしょう。

更年期の場合は、これらの症状にホットフラッシュなどを伴います。
治療として最適なのは、更年期症状全般を整えることですので、婦人科受診の上でのホルモン療法や漢方薬が効果的です。

その他、更年期に差しかかると、耳の血流障害や耳石の石灰化などが起こるので、回転性めまいも起こりやすくなります。全身の動脈硬化があれば、脳の血流障害も起こっている可能性があります。

月経が完全に終わるまでは、鉄欠乏とも無縁ではありません。

特に、更年期には、「貧血」「めまい」と呼ばれる様々な症状が起こりやすくなります。

 

適切な科に紹介してもらうとスムーズ

原因によって、耳鼻科・神経内科・脳外科・婦人科など専門科が違うため、病院受診はハードルが高いと思われるかも知れません。

まずは、分類を参考に、ある程度当たりをつけて、相談をしてみてください。

症状だけでは、完全に「〇〇科受診しましょう」とは言い切れませんし、不親切な医師に「うちじゃない」と言われても遠慮する必要はありません。

「では、適切な科はどこでしょう。適切と思われる先に紹介して下さい」と伝えて、紹介状を書いてもらうとスムーズに受診できると思います。

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