新型コロナワクチン5回目接種、打つ?打たない?帯状疱疹ワクチンは打っておくべき?免疫学者のアドバイスは

最近よく聞く「帯状疱疹」。チトセさん(58歳)は12月に帯状疱疹に罹患した際、「もしかして新型コロナと関係があるのでは?」と感じたそうです。外科、免疫学、漢方の3分野を専門とするトリプルメジャー医、新見正則先生に解説してもらいました。

前編記事『コロナの影響で「帯状疱疹が流行している」って本当?58歳女性の体験談と免疫学者の見解は』に続く後編です。

 

コロナと帯状疱疹の関係性はある?ない?

さて、前半冒頭に登場した帯状疱疹の罹患者、チトセさん(58歳)は皮膚科のドクターに「コロナワクチンと帯状疱疹は関係がある」と言われたそうです。この点はどうなのでしょうか?

 

「新型コロナウイルス感染症およびそのワクチンが帯状疱疹と関連を持つのか、現状ではまったく何もわかっていないとぼくは思っています。科学的な態度として、あるとも、ないとも言えませんから、ぼくは肯定も否定もしません」

 

ただし、新型コロナに罹患することで身体が持つ『免疫力』が下がることは間違いのないことだと続けます。

 

「ワクチン接種でどこまで免疫力が低下するかは議論の余地があります。そこから先の、免疫システムの中に弱い部分ができてしまい、神経の根っこに潜んだ水ぼうそうウイルスが活発になるというのはありそうな話とも、本当かな?とも、どちらともつかず」

 

新型コロナワクチンの影響も同様に、ワクチンの接種によってメッセンジャーRNAやそこから誘導されるタンパク質に免疫の抵抗勢力が動員されてしまい、帯状疱疹の発症に繋がるというロジックも絶対あり得ないと断言はできないと新見先生。

 

「そもそもコロナワクチンも、当初は専門家の多くは国民の5割から6割が2回接種すれば抑え込めると発言していましたが、結果的にその通りにはなりませんでした。まだ発生してからたった3年の新型コロナウイルスについて、人類はほぼ何もわかっていないので、何かを断言する言説は一つずつ疑ってみてもいいのではと思います」

 

たとえばコロナの流行によるステイホームで運動不足になり、免疫力が低下して帯状疱疹の発症を招いている可能性も同等には否定できないと新見先生は指摘します。

 

「どちらにせよ、加齢とともに帯状疱疹の発症数が増えることは間違いがありませんから、これに対抗するため免疫力を下げない努力をすることは必須です。その上で、よっぽど完璧な、長く効果が持続して予防率も高いワクチンが出てきた場合は、迷わず打つといいでしょう」

 

免疫の専門家が考える「信頼できるワクチン」の基準とコロナの行く末は?

新型コロナも含め、ワクチンは本当に私たちにはわかりにくく判断しにくい何かです。いったいどのようなワクチンなら打つべきなのか、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。

 

「免疫の専門家としてぼくが信頼に値すると考える理想的なワクチンの条件は5つ。『①無症状感染を防げる』『②効果の持続時間が長い』『③変異株に対応できる』『④集団免疫を獲得できる』『⑤長期的な視点からもほぼ安全』です。天然痘、麻疹(はしか)、風疹(三日ばしか)、水痘(おたふくかぜ)、ジフテリア、HPVのワクチンはほぼほぼすべてを満たしており、1回から数回の接種で95%以上の予防率が終生続きます」

 

⑤の『長期的な視点からもほぼ安全』という点が患者からはいちばん判断しにくいように感じますが、この点はどう考えるとよいのでしょう。

 

「安全性に関しては、ゼロリスクのワクチンは基本的に存在しませんので、どこまでのリスクを織り込むかは社会的な課題です。一方で新型コロナウイルスのワクチンは①〜④はどれも満たしておらず、また⑤に関してはまだ不明です。すべてハズレで、残念ながら冴えないワクチンです」

 

冴えないワクチン……毎年接種が必要なインフルエンザワクチンなども「冴えない」の側でしょうか。

 

「そうですね。なぜ『冴えてる』ワクチンと『冴えない』ワクチンの差があるのかはまだまだわかっていません。また、帯状疱疹のワクチンがそれら2つの間のどのあたりに位置するのかは現状まだ未知数です。なお、帯状疱疹のワクチンでは④の集団免疫を獲得する必要はありません。人から人に帯状疱疹がうつることは希ですから」

 

その上で、先生は冒頭のチサトさんに、5回目の新型コロナワクチン接種をどうアドバイスしますか?

 

「現状の旅行支援などを見ている限り、政府は3回まで打っていればよしという方針ですよね。従って、4回目以降の接種は自己判断でいいのではとぼくは思います。新型コロナウイルスとそのワクチンの状況は、不確実vs不確実というのがぼくの認識です」

 

謎かけのような言葉ですが、いったいどういう意味なのでしょうか?

 

「新型コロナウイルスは、流行の初期、得体の知れない不気味な存在でした。ワクチンが待ち望まれ、そして登場しましたが、緊急事態ということもあって安全性の試験は通常よりも簡単に済まされています。不確実な新型コロナウイルスに対抗するには、少々不確実な新型コロナウイルスワクチンでも接種するという作戦が成り立つからです」

 

新型コロナの国内での流行は2020年初春に始まり、日本でのワクチン接種は21年5月に開始されました。

 

「しかし、新型コロナウイルスは変異しました。変異株へのワクチンの有効性は高くはなく、80%以上の国民が3回のワクチン接種を終了しているのに流行を抑え込むことはできていません。効果の持続時間も数ヶ月とも言われています。一方で、新型コロナウイルスはオミクロン株になって感染力は増したものの、季節性インフルエンザに近づいていることはほぼ間違いありません」

 

なるほど、実際に季節性インフルエンザ同等の5類感染症への分類変更はもうずいぶん長い間議論されているように感じます。

 

「ぼくや家族は15年近くインフルエンザの予防接種は受けていません。感染したと感じた時は漢方薬で対応しているからです。ですから、インフルエンザと同程度になった新型コロナウイルスに関して4回目以降のワクチンは控えています。新型コロナウイルスの不確実性よりも、新型コロナウイルスワクチンの不確実性の方が実は気に掛かるからです。これが不確実vs不確実の意味です」

 

ただし、ワクチンを打たない選択をするということは『免疫力』のカードを1枚手放すことでもあります。

 

「新型コロナワクチンは切り札とは言えなくなりましたが、予防のためのカードの1枚であることには変わりありませんから、1枚捨てるのであればそれに替わる『免疫力』向上のカードを何か加える必要があります。漢方薬もそのカードの1つですし、運動やサプリメントもカードです。コロナ終息までの間はこのようにカードをなるべくたくさん持ち、総合的に健康力を上げる努力を精いっぱい続けてください」

 

▶前編記事『コロナの影響で「帯状疱疹が流行している」って本当?58歳女性の体験談と免疫専門家の医師の見解は

 

お話/新見正則先生

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。最新刊『フローチャートコロナ後遺症漢方薬』はAmazonでベストセラーに。

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