
46歳、更年期の強いうつで倒れてわかった。私たちは「やめるべきこと」をたくさん、たくさん抱え込んでいる
接した人がみな前向きな温かさを受け取って帰る、そんな新しい時代の女性リーダー像を体現するBé-A〈ベア〉の山本未奈子さんですが、じつは42歳の時点で更年期障害を実感し始め、46歳で「大クラッシュ」ともいえる壮絶な更年期障害に苦しめられた経験を持ちます。
「46歳の大クラッシュでは半年の間仕事も完全に休まざるを得ない状態になり、人生が180度変わりました」と語る山本さん。これまでの経緯と、大クラッシュからの回復についてお話を聞きました。
前編記事『46歳、女性社長が突然襲われた劇症の更年期うつ。「無関心、無気力、不安でたまらない…毎日涙を流していました」』に続く後編です。【100人の更年期#89】後編
回復とともに「なぜ倒れたのか」を考え始めた。更年期世代が「やめるべき」ことって
なぜ自分が倒れてしまったのかを振り返り、生活習慣を分析し始めた山本さん。最初に思い当たったのは、お酒を一切飲まなくなったことで身体があまりにラクになったという事実です。
「ここでやっと気が付いたんです、私は本当にムダな行動ばかりしていたのだなと。飲酒はストレス解消のつもりでしたが、完全に無駄な飲酒、身体に余計なストレスをかけるばかりの行為だったんです。社交だって、私は自分だけが楽しい場面から取り残されることへの恐怖感があったんですね。大勢とつながってないと怖いという思い込みも、いざ倒れてみたら、大切な友人さえいてくれれば大丈夫なんだなって気が付きました」
コロナをきっかけに同じようなことを考えた人もいるかもしれません。山本さんは回復した現在も、気を使わない、信頼できる友人にしか会わないと言います。さらに、原因分析の過程で起きた変化のひとつが『やめようと思うことをやめる』こと……って、どういう意味?
「たとえば、不健康な食事をやめよう!というようなことは、私はしなかった。しんどくなることがわかっているのになぜか繰り返してしまう行為から自分を解放してあげる、という感覚でした。私の場合はまずお酒でしたが、それも『お酒をやめる』のではなくて、あとでしんどくなるような飲み方を『しないようになった』んです。それ以上飲めば体調が悪くなるのがわかっているから、1杯か2杯以上は飲まないようにと」
食事も同様に、体に悪いものを食べたときは次の日気を付けようと考えるようになったところ、しばらく続けたところ自然に添加物を含む食品の摂取量が減っていきました。すると体調がどんどん敏感になっていき、結果的にグルテンをとらなくなるとお腹が張らなくなると気づけたそう。
「この『原因を分別すること』がすごく大変で、時間がかかりました。具合が悪くなっている原因が何であるかを見つけるのはかなり大変、どれだけ人間は日頃自分をしんどくする習慣ばっかり繰り返しているのかとうんざりするくらいです。でも、一度分別ができるようになると他の分野もわかるようになりました」
基礎を整えればホルモンの上下にもぐらつかない。副交感神経のスイッチを入れる方法を探して
お休みしていた半年間で、更年期のこともしっかり勉強したという山本さん。どうすればホルモンの波に惑わされないのか、自分がどういう状況でうつを発症したのかも分析したと言います。
「年をとると副交感神経のスイッチが入りにくくなりますが、私たち、もう自分で自分のスイッチを見つけて、積極的にオンにしないとならない世代なんですね。私は呼吸が浅くなっていたことに気づき、ヨガを始めました。また、香りが好きなので香りを積極的に取り入れてリラックスしたり、散歩も定期的にして。食事も見直しました。添加物をやめ、ファスティングでリセットもしています」
この年齢にしてはじめて一人旅行にも行きました。以前の山本さんなら考えられなかった行動ですが、ひとりの気楽さにも気づけたそう。
「背伸びもしていたなと感じました。立場的にも、社長らしく、また、母親らしくいないとならないという勝手な思い込みがあり、自分らしさを忘れている部分もあったんですね。素でいこう、そして自分の心と体の基礎をきちんと整えれば女性ホルモンの上下に惑わされなくなるんだなって思いました」
ヨガは週2回90分ずつ。最初は体力もなく、身体も固いためしんどく感じていましたが、続けるうちに慣れ、現在は仕事中気づいたときにストレッチやポーズをとって呼吸をコントロールしています。ヨガ特有の鼻から強く吐く呼吸も最初は恥ずかしさがありましたが、続けるうちにその大切さに気付いたそうです。
「ほかに、瞑想も副交感神経のスイッチを入れる訓練に最適でした。私がやっているのは原初音瞑想という方法で、頭の中で個人個人、特定の音をリピートしながら瞑想をします。私はバリのベルのちりんちりんという音で瞑想に入りやすいのですが、慣れてくると何もなくても入れるようになります。仕事中ストレスを感じたらちょっと瞑想、これだけで気持ちが軽くなり、リフレッシュしてリセットできるんです。朝、ストレッチして5分だけでも今日することを脳内でおさらいしたり、夜ならば今日はこんなにいいことがあって幸せだなと思い起こしたりもしています」
もうひとつ、山本さんが重視している生活習慣は「なるべく早く寝る」。
「そのためにできることを整えました。寝る前にお風呂に入ると交感神経優位になってしまい、眠りにつきにくい。なので、お風呂は家に帰ったらすぐ入ることにしました。6時にはお風呂に入り、それから夕ご飯です。寝室の湿度や温度にも気を使いました」
寝具は慎重に吟味、宿泊先のホテルで寝心地のよい枕を見つけたときには問い合わせて特別に販売したもらったこともあるそうです。パジャマもこだわって探しています。
「これらは自分をメンテナンスしていくための経費だと思っています。とはいえ、何も高いものが買いたいわけではなく、気持ちがいいものを妥協せず探すだけ。パリでとっても着心地がいいパジャマを見つけて買ったのですが、よく見てみたら何と、ユニクロのプリンセス・タムタムコラボアイテムでした。日本で見つけたかった!と思いましたね」
自分の「あり方」そのものの問題点も見つけた。イヤな人には近寄らなくていい
分別と分別の結果、これまでなら我慢してお付き合いを続けていた、会うとしんどくなる人には最初から近寄ることそのものをやめたという山本さん。
「どうしても関わらないとならない人の場合、感情のスイッチを切って無の状態で接します。この感情の切り替えができるようになるまでは訓練が必要ですが、別に感情を揺さぶられても、考えちゃっても、それはそれでいい。ただ、嫌なことを考える回数が人生の中で減ればいいんだ、とユルく考えると、ちょっとずつできるようになっていきました」
倒れる前はこの「受け流し」ができていなかったと山本さんは振り返ります。
「倒れるほどにまで、いらないストレスを勝手に背負い込んでいたんだなって思います。感情のスイッチを自分の意思で切れるようになってくると、びっくりするほどいろんなことが怖くなくなっていきました。だから、これまで人付き合いがよくて相手の意見に反論しない八方美人の自分をやめて、他人に左右されない、迷わない自分になるというのもこの過程で決めました。私は正しい、私はこうするんだというのを強く思き、他人の感情と自分の切り分けを強く意識を持って進めたんです。といっても気になっちゃうんだけど、気になっちゃうことも含めてそれでいい、左右されないと」
人に気をつかいすぎるタイプの山本さんは、その代わりに自分にまったく気をつかえていなかったそう。仕事とプライベートを一切分けず、夜も週末も働いて、休む時間がほとんどありません。電話がかかってきて「今から出てきて」と言われたら断れませんし、やりたくない仕事も引き受けてしまいます。
「でも、倒れてみて、これまで30代、40代とがんばってきた分だけ、更年期世代には結構たくさんの選択肢があるんだなって感じました。倒れたことをきっかけに、苦手なことより得意なことに集中しようと考えるようになりました。遠慮してなんでも引き受けてしまうのはもうやめて、これは私できないよとはっきり言えるようになりましたし、人からどう見られるかが気にならなくなった。これは大きな収穫でした」
さらに、「毎日やらなきゃいけない」という思い込みも持たないよう気を付けるように。何かしなければならないという思いから自分を解き放つ練習をひたすら続けているようなものだといいます。
「結果的に、いろいろなものを手放していったら、他人の考えを聞いたときイラっとする自分から卒業できました。すっと流して、違う意見があるんだなと受け入れられる自分って、魂のステージが1ランク上がったんじゃないかな?とすら思えます」
46歳での大クラッシュを経験した山本さんは、半年かけて「答えは自分の中にある」ということに気づきました。
「自分の感情も気持ちも体調も、結局は自分にしかコントロールできないんです。自分がどう捉えるかで世の中が変わっていきます。執着をなるべく捨てて、世の中にはいろいろあるのだなと受け流し、『しなければならぬ』を自分にも他人にも強制しない。ご飯作らなきゃいけないなんて思いも全部すてて、やりたくないときは休む、そのかわりやりたいなと思えた瞬間に全部やる。モチベーションをずっと保つのって、絶対無理なんです。仕事だってやりたい瞬間があるじゃないですか、そういうときに集中してやる。その代わり、だめだなというときはそんな自分のことも受け入れて、無理してやらない。こういうことの大切さを身をもって実感しました」
身近な肌の問題を解決したいという思いでスキンケアのブランドを立ち上げた山本さん。やがて興味は女性が活躍できる社会を作りたいという思いにシフトし、生理や性、更年期などにフォーカスして悩みを解決するプロダクトを提供する仕事へと移りました。
「私たちはずっと、夫を、子どもをと、自分以外を優先して生きてきました。でも、更年期はそれをやめて、まず自分を大切にしてください。私たちが健康でいないと、子どものケアもできません。更年期世代の女性は、自分ファーストでとことん自分をいたわって暮らしてください、それだけかなり状況はよくなるはずです!」
Bé-A〈ベア〉
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