デヴィ夫人、大炎上で浮かび上がる「例のいやなクセ」(後編)

2023.07.29 LIFE

「カネで解決」という価値観がはらむ危険性

しかし、こういう見方もできるのではないでしょうか。

 

男性は既婚者ですから、結婚はできない。にも拘わらず、10代の美しい女性と食事をしたりセックスしたいのなら、誠意はカネで見せるしかないのではないでしょうか。同様に二人の間でトラブルが起きても、カネで解決するしか方法はない。「強い男に選ばれるとトク(カネが手に入るから)」「中絶すると不妊になる」「無理やりキスされたり、セックスさせられたことを不服に思ったら、カネで解決」は、この時にしみついた観念なのではないかと思います。

 

カネをもらえるという意味では、おトクかもしれません。しかし、違う角度から見ると、オトコからカネをもらう関係は、女性に文句を言わせなくするという目的があるのではないでしょうか。

 

なぜ夫人は、女性差別発言を繰り返すのか?意外な理由

差別が激しかった時代の水商売経験者だから、夫人が炎上発言をすると決めつけるのは、簡単です。けれど、私はあと一歩踏み込んで考えたい。

 

夫人が侮辱している女性たちは、「かつての自分」なのではないでしょうか?

 

「デヴィ・スカルノ自伝」で、夫人は「日本では、家庭、教育、過去、環境が整わねば女一人の人格なんてだれも認めてくれない」と書いています。赤貧家庭に育ち、勉強が好きだったのにお金がない故に高校進学をあきらめ、人には言えないという多少の後ろめたさを感じながら、水商売という仕事をしていた夫人。

 

そこから必死の思いで抜け出して、大統領夫人という「認められる人」になれたからこそ、夫人は「認められない人」を見下して差別してしまうのではないでしょうか。

 

わが子を虐待して殺してしまうという事件が後をたちませんが、「加害者」である親を調べてみると、親自身も虐待されていた「被害者」であることがわかるというのは、よくある話。

 

「そういうことは言ってはいけない」配慮ある多様性を

おかしな発言をしたからといって、夫人を追い詰めるのはよくありません。しかし、こうやって女性差別のような問題が炎上すると「そういうことを言ってはいけないんだ」という意識が浸透して、加害者も被害者も減らせます。炎上は必ずしも無意味ではないようです。

 

でも、夫人はしばらくはテレビ出ちゃダメだぞ☆きっと余計なこと言うから。

<<この記事の前編:よく燃えた、デヴィ夫人の炎上事件簿を振り返る

文/仁科友里

本記事は2020年10月に初回配信されました

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