よかれと思ってやりがち!祖父母・両親を「寝たきり」にする【2大NG行動】とは
猫背は将来の寝たきりにつながる!?
上村さんによると、猫背を続けていると、将来、寝たきりになる恐れがあるとのこと。一体どうしてなのでしょうか?
「先ほど、姿勢の重要性を説きましたが、PCやスマートフォンなどを使うときに前かがみの姿勢をとっていると、猫背になる危険性が増すので、注意が必要です。猫背になると姿勢が悪くなって見た目が悪いというだけではありません。肩こりはもちろん、肩こりが原因の頭痛、めまい、集中力の低下、慢性的な倦怠感といった症状が出る危険性も増します。
また前かがみになることで内臓や血管が圧迫され、便秘や食欲不振、冷え性などの原因にもなります。さらに前かがみになると歩幅が狭くなり、転びやすくもなります。最近、転んだ、つまずきやすくなった、歩くのが遅くなったという人は、猫背になっていないか、注意してみてください」
祖父母・両親にも教えたい! 寝たきりを防ぐ方法
寝たきりと聞いて、祖父母や両親のことを心配になった人もいるのでは? 家族はもちろん、自分自身の将来のためにも、ぜひ寝たきりを防ぐ方法を教えていただきましょう。
「抗重力筋が弱ると、重力に負けて姿勢が悪くなります。姿勢が悪くなることで、バランスが悪く、転倒しやすくなります。立ち上がりにくくなり、歩くときにもバランスを崩しやすくなります。このような状態になると、肩が前側に倒れ、円背につながるばかりか、果ては寝たきりで生活しなければならなくなります。抗重力筋を鍛えることは猫背や円背だけでなく寝たきりを防ぐことにもつながるのです」
対策としては、前編記事で教えていただいた肩甲骨はがしや腰ひねり、お尻歩き、スーパーマンを含めた7つの「セルフリハ」を日々、実践すること。そして、実は環境も大事なのだそうです。
環境づくりも大切! 高齢者の身体を衰えさせるNG行動
実は孫や子が「よかれ」と思って作った環境が、祖父母や両親の身体を早く衰えさせることにつながることもあるのだそうです。例えば次の行動は避けるべきといいます。
◆NGその1◆ 同居して家事を全部やってあげる
「リハビリ施設に通われている83歳の女性が、あるときから身体機能があまり改善しなくなったことがあります。話を聞いてみると、少し前から娘さんが同居しはじめ、家事などの身の回りのことをすべてやってくれるようになったのだそうです。家事は無意識のリハビリ。洗濯物を干す動作や掃除機をかける動作は抗重力筋を使うため、やらなくなることはリスクが大きいのです。家族の深すぎる愛情が、かえって身体を衰えさせることを知ってください。同居するなら、ただ見守るだけがおすすめです」
◆NGその2 ◆ 60歳を超えたから段差をなくすなどのリフォームをする、布団からベッドへ替える
「60歳を超えたからといって、急に段差をなくすなどのリフォームをする、身体的に支障は特にないのに布団からベッドへ替えるといったことも、身体を衰えさせるリスクがある行為です。
確かに段差をなくして手すりをつければ楽に移動ができますし、寝床から楽に起き上がれたりすれば負担を感じずに済むかもしれません。しかし何度も転倒していて危ない、よほど身体が弱っているなどのケースを別にして避けるべきです。
なぜなら手すりをつけると腕の力を借りて歩くことになるため、足の筋肉が衰えてしまうからです。またベッドよりも、布団から起き上がるほうがより筋肉を使います。
これらも孫や子がコントロールできる部分でもあると思いますので、ぜひ意識してください」
猫背からくる肩こりや腰痛のメカニズムや改善策、そして寝たきりを防ぐ方法を教えていただきました。ぜひこの機会に、自分はもちろん、祖父母や両親の身体や生活を見直してみるのも良いのではないでしょうか。
【取材協力】
理学療法士
上村 理絵(かみむら・りえ)さん
1974年生まれ。中京女子大学(現・至学館大学)卒業後、関西女子医療技術専門学校理学療法学科(現・関西福祉科学大学)を経て、理学療法士として活動。「理学療法士によるリハビリテーション」「日本で初めて介護保険分野で受けられるサービス」を世に誕生させた誠和医科学(現・ポシブル医科学株式会社)の創業を支援。およそ10年間で、のべ16 万人に生活期のリハビリを提供し、そのビジネスモデルの骨格を現場で作り上げてきた。同社退任後、リタポンテ株式会社の立ち上げに参画。理学療法士の立場から、「高齢者に本当に大切なリハビリ」を提供している。著書に『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』(アスコム刊)がある。
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