日本人の75%が間違える日本語「ぞっとしない」。いい意味?悪い意味?

「このあたりで、軽く食事を取りながら、お話しできるところはありますか?」という問いに「この辺、あまりぞっとしない店ばかりなんだよね」と応えた上司。さあ、あなたならなんと切り返しますか?

 

あなたの街はぞっとしない店ばかり?そうでもない?

先月、平成28年度「国語に関する世論調査」の結果が発表になりました。国語に関する様々なデータの調査結果で、国語に関する仕事をしている者はかなり活用しています。その中で、毎年「誤用」の例として数例統計データを公開しているのですが、今年はその中に「ぞっとしない」が入っていました。試しに答えてみましょうか。みなさんはどのように回答しますか?

 

例文:今回の映画は、余りぞっとしないものだった。

ア 面白くない
イ 恐ろしくない
ウ アとイの両方
エ アとイとは、全く別の意味
オ 分からない

出典:平成28年度文化庁「国語に関する世論調査」より

 

正解、つまり本来の「ぞっとしない」の意味はアの「面白くない」です。

まずは本来の意味を知っておきましょう

 

【ぞっとしない】

・それほど感心したり、面白いと思ったりするほどでもない。(広辞苑第六版)
・あまり感心しない(現代国語例解辞典)

 

もう少し用例を見てみましょう。理解が深まるでしょうか。

 

どのホテルへ行く? 近所のはどれもぞっとしないようなものばかりだが、百二十フランしか持ち合わせはないし……
『愛は束縛』フランソワーズ・サガン(著)/河野万里子(訳)

ぜひとも行きたくなったわ、レイス大佐。でも、汽車で五日もかかるのはぞっとしないわね
『茶色の服の男』アガサ・クリスティー(著)/ 中村 能三(訳)

 

そう。簡単に言うと「感心しない」「面白くない」という意味です。冒頭に出てきた上司との会話を見てみましょう。

「このあたりで、軽く食事を取りながら、お話しできるところはありますか?」という問いに
「この辺、あまりぞっとしない店ばかりなんだよね」と応えた上司。

つまり「この辺、あまり面白くない店ばかりなんだよね」「あまりパッとしない店ばかりなんだよね」ということです。ですからここは「そうなんですか?意外とオシャレな街の印象ですが」とか「私、ファミレスでも構いませんよ」などの切り返しが良いですね。

 

間違った意味で使っている人は、20代で71%、30代で82%、40代で75%

この平成28年度文化庁「国語に関する世論調査」によると、「ぞっとしない」に関して、本来の意味とされる「面白くない」は、60代以上で他の年代より高く、約3割となっていますが、16歳~19歳、20代、30代、40代、50代、60代、70歳以上、全ての年代において、誤解された「恐ろしくない」より下回っています。平成18年度と比較しても、16歳~19歳を除く全ての年代で5~17ポイント減少しています。つまり、どんどん本来の意味として使われなくなっているということです。しかし、だからと言って、本当の意味を忘れて良いということに直結しません。特に、年配の方が使った時に誤解しないようにしておく準備は必要ですよね。

 

琴線に触れた上司。怒る?泣く?

では、次の言葉はどうでしょう?あなたは誤解していませんか?

 

琴線に触れる

ア 怒りを買ってしまうこと
イ 感動や共鳴を与えること
ウ アとイの両方
エ アとイとは、全く別の意味
オ 分からない

出典:平成27年度文化庁「国語に関する世論調査」より

 

正解、つまり本来の「琴線に触れる」の意味はイの「感動や共鳴を与えること」です。
まずは本来の意味を知っておきましょう

 

【琴線】

・琴の糸。感じやすい心情。心の奥に秘められた、感動し共鳴する微妙な心情。(広辞苑第六版)
・琴の糸。比喩的に、人間の心の奥深くにある感じやすい心情。(現代国語例解辞典)

 

もう少し用例を見てみましょう。理解が深まるでしょうか。

 

・マライア・キャリーとボーイズ2メンのミュージックビデオをVCDで見る。心の琴線に触れる曲だ。なぜかホノルルを思い出す。
『鬼が来た!』撮影日記 香川照之(著)

―受験なんてやめてもいい。 孤独な受験戦争で疲弊したボロボロの小さな心の琴線に触れる、胸に迫る温かな言葉。
『カリスマ』上 新堂冬樹(著)

 

心の奥に「琴」があり、その琴をそっと鳴らす。そして共鳴して心が震える。そういう意味で使います。
琴線に触れた上司は「怒る」のではなく「泣く」方の反応となるわけです。

 

20代の34.8%、30代の30.2%、40代の29.8%が誤解

この「琴線に触れる」ですが、平成27年度文化庁「国語に関する世論調査」によると、確かに本来の意味とされる「感動や共鳴を与えること」は、誤った使い方の代表「怒りを買ってしまうこと」をわずかに上回っています。しかし、わずかに上回っているだけで、相変わらず誤解している人が多いのも特徴です。

以前、こんなことがありました。怒っている女性に対して、私も同じ意見だったので、「そうね、その通り」と同意し続けていたのですが、突然「まったくあの人は私の琴線に触れることばかりするわ!」と言い放ったのです。日ごろ、私は職業柄「その言葉、間違って使っていますよ」と助言することが多いのですが、さすがにこの時は言えませんでしたね。もし言ったら、私の言葉は彼女の逆鱗に触れたことでしょう。
そう!お気づきですか? この「逆鱗に触れる」が誤解の元なのですね。

 

【逆鱗】
・天子の怒り。目上の人の怒り。(広辞苑第六版)
・目上の人等の気持ちに逆らって怒りを買うこと。(現代国語例解辞典)

 

語源は、竜のあごの下に、逆さのうろこが1枚あって、触れると怒って殺されるという『韓非子』の「説難(ぜいなん)」篇、故事からきたものです。

 

同じ触れるでも、琴線と逆鱗では、まったく違う意味になってしまいますから、注意が必要ですね。

 

言葉は移りゆくもの。それでも正しい意味を知っていることに何の損もありません。特に年配の方と話す機会の多いポジションの人は知っていた方が良いでしょう。

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