
夫が口にした「廃業しようか」の言葉。地震の被害は、崩れたブロックだけでも1,500万円。妻が出した答えとは
湧水と薪でお風呂を沸かし、交代で食事当番。避難所生活に「大きなストレスを感じなかった」理由とは……
能登町に戻ったあと、日中は避難所で助け合って生活、夜は自宅で寝る生活をつづけた。
大地震から2日後、1月3日にようやく家族5人が合流できた朋子さん一家。自宅はまだ新しかったことも幸いし一部損壊に留まったものの、ライフラインは断絶した状態。そのため、同じ地域の人々と避難所で生活を共にすることになりました。
「我が家は倒壊の危険がないと判断して就寝時は自宅で過ごしていましたが、何せ電気も水道も止まっている状態。日中は近所のみんなが集まる避難所で、助け合って生活していました。ご飯作りや洗い物はそれぞれ交代制。合間にそれぞれ家に戻って片づける、という毎日でしたね。
震災直後は皆、それぞれが地域のためにできることをしていた。上野さん一家は、出荷予定だった椎茸を避難所や近くの老人ホームに提供。
自衛隊によるお風呂が開設されたのが地震発生から10日後だったので、それまでは近所の家に残されていた古い薪風呂にみんなで水を運んで、交代で入ったりもしましたよ」。
山の湧水を汲んでお風呂に運び込み、火おこしと薪の番をするのが男性の役目。炊事周りは女性の役目。
「まるで時代が巻き戻ったようですよね(笑)。でも、気づけばごく自然に、そんな役割分担が生まれていました。
私が暮らす地区は、もともと近所同士の仲がいいんです。地区対抗の運動会も一致団結しますし、ふだんから皆を仕切ってくれる人など……それぞれの得意分野も以前から分かり合えていました。それぞれが自分のできることを引き受け、互いにそれを理解しあえていたおかげで、大きな揉め事もなく避難所生活を送れていたのだと思います」。
時に笑い話まで交えながら、当時を振り返る朋子さん。さらにお話を聞いていくと「共同生活につきものの大きなストレスはあまり感じなかった」と言える、もう一つの理由が見えてきました。
近所に住む従妹と仲良しの三女。自衛隊の方々は必要なものを毎日聞いてくれるなど、とても親切にしてくれたそう。
「この期間って、ある意味では現実と向き合うのを先延ばしできた時期でもあったんですよね。
たとえば避難所生活の最中は、椎茸の栽培ハウスは被害を受けたまま、相変わらず手つかずの状態。震災直後に状況を確認した夫からは『お手上げだ』と聞かされていましたから、彼がその現実を一番認識していたはずなんです。ところが、避難所で過ごす夫に、深く考え込んだり悲観したりする様子は特には見られませんでした。
避難中は仕事なんて何もできないですからね。細かいことを考えず、水を汲んで火を起こすことに集中すればいいという選択肢のなさが、彼の心を一時的に軽くしていたんだと思います。
――家族以外の人間との共同生活より、その先に待っていた家に帰ってからの生活と仕事の方が、よほど大変でした」。
生活も仕事も、自分で立て直すしかない。突き付けられた現実を前に抱くそれぞれの思い

足の踏み場もない、被災直後の自宅の様子。電気が復旧していない中、日中、明るい時間帯に少しずつ片づけをしていた。
震災から日がたつにつれ、近所の人々と手を携えながら生活していた避難所にも徐々に変化が表れ始めました。親類がいる金沢方面に二次避難する人や自宅での生活再開を目指す人が徐々に増え、避難所は2週間ほどで解散することに。
「家族だけの生活の方が気楽だと思われがちですが……あの時は、むしろ逆。自分のことは全部自分で、という現実は大きな負担でした。
これまで当番制だった食事作りは1日3食、断水がつづく中、自分で準備しなくてはならないし、洗濯は近所の洗濯機や山水が引かれている場所を借りにいくなど不自由な状況で、手間も時間も取られます。ちょうど子どもの学校が再開する時期でもありましたから、その準備をしながら”新生活”に対応するのはさすがに大変な毎日でした」。
朋子さんの暮らす地域は降雪地帯。「震災後のガタガタな雪道を通って出かけるのは怖く、負担がさらに増していました」と当時を振り返ります。
「何よりストレスだったのが、余震です。”余震”といっても、震度5レベルのものもザラでしたから……。せっかく片づけたものがまた落ちてくるし、何より元日の揺れが蘇り、余震のたびに大きな緊張に襲われるんです。その繰り返しに『さすがにいい加減にしてくれ』と言いたくなる瞬間もありました」。
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