「領収書をお返しします」は間違い?丁寧なつもりでNGな日本語
「バイト敬語」と呼ばれる敬語があります。もちろん正式な分類ではありませんが、主に接客業で使われ、文法的におかしなもの、言われて違和感のあるものです。日本語の乱れとしてやり玉に挙がっています。言語学的に、また方言としてはおかしくないという反論もありますが、概ね快く思われていないのが現実です。
そういった意味で使わないようにしている人が多い中、まさか大人の女性でこんな言葉を使っている人はいないと思いきや、街の中で意外と耳にすることが多いものを集めてみました。若い人なら許されることでも、大人ではかなり恥ずかしいこと。もう一度こっそりチェックしましょう。
例1 お名前を頂戴できますか?
「頂戴する」は「もらう」の謙譲語です。つまりこの文は「あなたのお名前をもらっても良いでしょうか?」という意味になります。分からなくもないのですが、よく考えると変ですよね。では、本当はどう言いたかったのでしょう? あなたはどう言いたい時にこの言葉を使いますか? そうですね。相手の名前を伺いたい時ですよね?だったらそう言えばいいのです。
- 恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?
シンプルですね。敬語は自分を下げたり相手を上げたりして、言葉を変える印象がありますが、遠回りな言い方にしなくても良いのです。特に使い慣れていない人が回りくどい表現をするとたいてい失敗します。
「名前を伺いたい」このことをシンプルに、そして丁寧に言えば大丈夫なのです。
また、この「恐れ入りますが」はクッション言葉です。詳しくはこちらのコラムに書きましたので、興味のある方はご覧ください。
ぐっと感じが良くなります。
「ご用件は?」「お名前をお伺いしても?」知らずに言いがちな失礼対応
例2 お荷物の方、お預かりします。
もともと「方」は、方角をぼやかした言い方です。
- 関西の方では、そういう言い方をする時もある。
- 今日は、名古屋の方からも人が来るのよ。
- この家は東の方を向いている。
このように使うのがもともとの使い方。直接ズバッと言うことをはばかった、日本らしい表現ですよね。
他に、ダイレクトに表現することを避ける為に使う場合もあります。
- お金の方は大丈夫なの?
- 最近、仕事の方はうまく行ってる?
- 元気は元気なんだけど、ちょっと認知症の方がね。
ところが、何でもかんでも奥ゆかしく感じるというものでもありません。次のような言い方は、割と多く耳にすると思いませんか?
- お席の方、ご用意できました。
- デザートの方、お持ちしてもよろしいでしょうか。
- お荷物の方、お預かりいたします。
近年「消防署の方から来ました」と間違ってはいない表現をして住居に侵入する訪問販売もあるとか。確かにその人がそちらの方角から来たのであれば、嘘にはならず、玄関を開けてしまう「方」に責任があることになってしまうようです。
この、玄関から入る方、玄関を開けてしまう方、このように、二つものがある場合は「方」を使います。
ところが、「お席の方」「デザートの方」「お荷物の方」は微妙です。確かに、「お席の方」に対して食事などまだ用意ができていないものがあり、それに対して「お席の方はできました」と言えるといえばそうなのですが、普通はそういう考えなくこの言葉を発していることが多いでしょう。デザートも同様ですし、荷物に関しては比較対象が不明です。
このような場合には「方」を消してOKです。
- お席がご用意できました。
- デザートをお持ちしてもよろしいでしょうか。
- お荷物をお預かりいたします。
シンプルイズベスト!ですね。何も問題がありません。「方」なんて付けて奥ゆかしさを出さなくても良いのです。もし、奥ゆかしさをプラスしたければ、先ほどのクッション言葉を使うと良いでしょう。
- お待たせいたしました。お席がご用意できました。
- 失礼いたします。そろそろ、デザートをお持ちしてもよろしいでしょうか。
- よろしければ、お荷物をお預かりいたしますが。
そして意外と多いのが…次ページ
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