日本にいるとメンタルを病む(笑)。だからヒマラヤは人生の休憩をする場所。毎回、真剣勝負という感じだったら、行きたくなくなっていた【登山家・渡邊直子さんに聞く】
初心者は素直に頼れるのに経験者はプライドが邪魔をする。だからむしろ、ビビリでいいんです
――知識や情報はあればあるだけいいような気がしますが、意外とそういうものでもないのでしょうか。
初心者がひょいっと4700mまで行けちゃうのは、余計な知恵をつけていないからというのもあります。初心者は困ったらすぐに助けてって言えるし、シェルパにも素直に頼ることができる。経験者はプライドがあったりして、自分で頑張ろうとしてしまい、余計に負担が大きくなるんです。知識があるほうが恐怖心で尻込みしがちですし、高山病の症状が出たからもうダメだとか、自分の力量では無理だと早めに決めつけてしまう。
真面目な人ほど勉強しようとしますが、それが必ずしもプラスに働くとは限らないんですよね。もちろん、装備など最低限の準備は必要です。私も高山病や凍傷などに備えて、装備、食料、薬など一生懸命調べて準備して行っていましたが、一座目のチョ・オユーのときは、モコモコのダウンスーツの存在を知らずに登っているんです。頑張っていろいろ準備したけど、ダウンスーツの存在は誰も教えてくれなかったので。
――そこまで準備をして臨んで、山頂まであと150mでも引き返す決断をする。楽観的にやってみるにしても、無理は絶対にしない、というところは徹底されていますね。
何が何でも登頂する、という思いでは行っていないので。無理をして凍傷にでもなってしまったら、看護師の仕事ができなくなってしまう。そこまでして登るもんじゃないなっていうのがあるし、やっぱり怖いという感情を持たずに登山家はやってはいけないと思うんです。自分は弱い人間なんだ、シェルパに助けてもらわないとダメなんだってわかっている人のほうが、無事に帰れます。頼るのが恥ずかしいと思ったら、どうしても無理しちゃうじゃないですか。
だから経験豊富な人、プロとしてやっている人よりも初心者のほうがいい。ビビリでいいんですよ。自分でやれるから! と意地を張らないほうが、素直に甘えたほうがモテますし(笑)。私なんて、もう慣れているのが(シェルパの)みんなにバレているから、あんまり甘やかしてもらえない。初心者でキャッキャしながら親切にしてもらう女子が羨ましいです(笑)。
▶登山は挑戦ではなく「休憩」
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