新NISA「実はこれがいちばん大事…」長期アセットアロケーションとは何なのか?元ファンドマネジャーがそっと指摘#5

24年年頭にスタートした新NISA制度。「オルカン」「S&P500」という言葉はすでにおなじみとなりました。しかし、「よくわからないなりに何とか始めました」という人だけでなく、「始めないといけないのはわかっているけれどどうしていいのかわからない」という人もまだまだいるでしょう。

 

「オルカン積んでるから俺はOK」と考えている人に、元ファンドマネジャーの澤田信之さんから「それが危険な場合もある」と確認事項が。さっそくご説明いただきましょう。

【元ファンドマネジャーが指摘「新NISAでやらねばならなかったこと」】#5

(この記事は7本シリーズの5本め/

 

資産をどのような形で持つべきかは、そう簡単に説明しきれるものではない

こんにちは、元機関投資家・ファンドマネジャー、現在は文筆業兼個人投資家の澤田です。資産運用は順調ですか?

 

今回は「資産運用の5ステップ」の「3.アセットアロケーション」について、前回の続きをお伝えします。題して、「キャッシュフロー表とアセットアロケーション」です。よろしくお願いします。

 

 【資産運用の5ステップ】

  1. 資産運用の公式 家計の損益計算書とバランスシート
  2. ライフプランとキャッシュフロー表
  3. アセットアロケーション
  4. コアサテライト戦略とアクティブ・パッシブ
  5. 実践(元機関投資家の資産運用)

 

 

アセットアロケーション(AA)は日本語で言うと資産配分です。基本的な考えについては前回記事をご覧ください(こちらから)。アセットクラス(資産の分類)の組み合わせで最適ポートフォリオを作ることができる、一方で、オルカンは期待リターン最大ながらリスク最大である、という内容でした。私がお勧めするAAもご参考くださいね。

 

今回はそこから一歩進めて、キャッシュフロー表とAAの関係についてお話ししたいと思います。

 

ひとことでいって「オルカン一択」が正解である人は極めて少ないのです

AAは無数に存在します。全部株、ローンを組んだ不動産、仮想通貨の組み合わせ、VC(ベンチャーキャピタル)、郵貯一択、オルカン一択、何を選ぶかは個人の自由です。そして結果責任をとるのはあなたです。できれば賢い選択をしたいものですね。

 

今まで資産運用をしたことがなく、金融資産が1000万円全額預金のかたがいらっしゃるとしましょう。NISA、ジュニアNISA、よくわからないので一応ふるさと納税だけやりました、今回、新NISAで初めて資産運用に触れる方を想定しますと、はい、オルカン一択が正解です。(例1)

 

ですが、ここまで読んできてくださった皆さんはご自分のバランスシートをご存知です。キャッシュフロー表も作りました。作っていなくても、概念は理解できているでしょう。まだの人は#2から読んでください(こちら)。

 

そんな皆さんの中には、既にオルカン一択を卒業している方や、オルカン一択ではリスクが高すぎる方がいらっしゃいます。

 

オルカン一択がNGな人は「どこへいけばいいのか」

バランスシートで資産運用の現状(現在のAA)を把握すると、キャッシュフロー表に基づく資産増減を追加することで未来のAAが手に入ります。ポイントは10年後、ある方は20年後、そしてリタイア時点でのAAを見てみることです。

 

例えば現在確定拠出年金(401K)で残高が500万円、預金が500万円の方がいらっしゃるとします。会社のおススメで401kはグローバルバランスの投信を組み入れています。

 

投信の値動きはそこそこ、と知っていますが、月報を見てみると日本株20%、債券20%、日本の不動産投資信託(以下REIT)20%、外国株20%、外国債券20%と書いてあります。この方のAAは預金を合わせて、日本株10%、債券(と預金)60%、REIT10%、外国株10%、外国債券10%となります。

 

キャッシュフロー表を見ると、年100万円ずつ運用に回せるようです。どうすれば財産三分法に辿り着くでしょうか。運用をしなければ10年後預金が1000万円増えています。AAは日本株5%、債券(と預金)80%、REIT5%、外国株5%、外国債券5%となります。20年後、仮に30年後をリタイアとすると、運用しないままではどんどん預金の比率が上がっていき、財産三分法から乖離していきます。

 

このような状態のことをアンダーインベストメント(投資不足)と呼びます。預金の期待リターンはインフレ率以下ですので、インフレに負けて購買力は低下していきます。(例2)

 

逆にオルカン一択の方を見てみましょう。同じく金融資産は1000万円、旧NISAでオルカンを600万円積み立てていて、今回新NISAでも年額マックスの400万円を既にオルカンに投資済みです。為替の円安、外国株の高値更新、これまでのところウハウハですね。

 

この方の現在のAAは日本株5%、外国株95%です。同じくキャッシュフロー表からは年100万円ずつ運用に回せます。今のところまた全額をオルカンに入れていこうと考えていますが、正解でしょうか?

 

答えは × 、この方は既にオーバーインベストメント(投資過多)の状態で、リスクを取りすぎています。前述のライフプラン変更に耐えられない状況ですね。

 

仮に今後10年間預金に入れ続けたとしても、10年後未来のポートフォリオは日本株2.5%、外国株49.5%、預金50%です。20年後やっと外国株の比率が30%強に下がりますが、それでも高いと思います。(例3)

 

ここまで説明してやっと触れることができる「長期的なAAを決めることの重要性」

長期的なAAは「そこに収まるように調整すればいい」決まり事です。いつもそこに帰ればよいので、長期的なAAを決めると資産運用は気が楽になります。リスクを取らず結果的にインフレに負ける預金だけ、とか、過剰にリスクを取ってライフイベントが起きた時に芯まで冷えるオルカン一択、とか、極端な資産配分ではなく、インフレに負けない資産配分に近づけていけるからです。

 

ですが、財産三分法は海外投資をできない時代にできた資産配分です。今では海外投資も常識ですので、ここからは「グローバル三分法」をご提案します。

 

株1/3、債券(預金)1/3、不動産1/3に加え、海外1/3とします。足すと1を越えてしまいますが、これは株の中に外国株、債券(預金)の中に外国債券、外貨預金を含んで、為替リスクを1/3取り込もう、という考えです。

 

日本に比べて名目成長率が高いことから株の期待リターンが高く、金利も高い海外を資産配分に取り込んで、全体の期待リターンを高めながら、為替リスクもある程度に抑えた資産配分です。

 

詳しくは「5.実践(元機関投資家の資産運用)」でご説明しますが、私は

 

日本株10%

外国株20%

債券など20%

外国債券(含む外貨預金)10%

不動産(持ち家とREIT)30%

預金10%

 

を長期AAに据えて、FIRE生活を送っています。

 

実際にどのように「内訳」を構成すればいいのか?

今すぐ入替をしてその資産配分にする必要はありません。仮にこの「グローバル三分法」に基づいた長期AAを採用するとしましょう。その場合、例1で言えば、10年後の未来AAで外国株が占める比率が20%になる400万円に到達するまではオルカン一択、その後不足している日本株、外債(外貨預金)、REITに残高を積んでいく手順がお勧めです。

 

REITについては「4. コアサテライト戦略とアクティブ・パッシブ」で詳しくご説明します。流れとしては期待リターンが高い資産クラスから投資をして、順番に他の資産クラスに広げてゆく戦略がいいですね。最初2年はオルカン一択で正解です。

 

例2で言えば、401Kで組み入れられているグローバルバランスファンドをそのまま生かしたいですね。401Kは課税が受け取り時まで繰り延べられるのに加え、掛け金が所得控除されたり退職金の税制が適用されたり、とても投資家にとってフレンドリーな税構造になっています。そこに上乗せで新NISAを使っていくのがよさそうです。例1と同じく最初1年はオルカンでよさそうですね。その後早めに他の資産への投資が始まります。いずれもアンダーインベストの状態から追加資産を使って長期AAに近づけていく手法です。

 

例3はオーバーインベストメントとなっていますので、売却が発生します。円安、株高でオルカンの基準価額は取得時に比べてだいぶ上昇しているでしょう。このラッキーを生かして、他の資産への投資を開始しましょう。幸いなことに新NISAは売却益に課税がなされません。日経平均4万円、ドル円160円の現状を考えれば、日本株、外国債券への投資は後回しにして、利回りが上昇している債券や値下がりしているREITにスイッチングすることをお勧めします。

 

次回は長期AAに基づいたリバランス、そして株、債券以外の資産クラスについてご説明します。それでは皆様ごきげんよう、ドキドキのない資産運用を祈念しています。

 

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