
花魁が過酷な暮らしの中で磨いた「駆け引き」、嫉妬する作家たち。蔦重が“江戸の敏腕プロデューサー”だった理由とは【NHK大河『べらぼう』第22回】
*TOP画像/誰袖(福原遥) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」22話(6月8日放送)より(C)NHK
吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第22話が6月8日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
心が強く、聡明でないと「花魁」に君臨できない
誰袖(福原遥)といえば、蔦重(横浜流星)に強引に抱きついたり、意識が朦朧としている大文字屋の主人・市兵衛(伊藤淳史)に“蔦重との身請けを500両で許す”と遺言を書かせたりと強気な振る舞いを繰り返していました。筆者はそんな誰袖の姿から天真爛漫で、無邪気な女性なのかと思っていましたが、本放送を観てそう単純な女ではないことに気付きました。
誰袖は意次(渡辺謙)の息子・意知(宮沢氷魚)に対し、松前がオロシャと抜荷(=密貿易)で利益を得ている証しと引き換えに、身請けしてほしいと交渉を持ちかけました。どうやら、誰袖は意知の顔が好みで、彼に一目惚れしたよう…。
誰袖が目を付けたのは松前藩の弟君・廣年(ひょうろく)でした。彼の懐事情を巧みに聞き出しただけでなく、心を掴みました。さらに、廣年が腕に着けていたオロシャ産の琥珀のブレスレットを荷抜けの証しとしてちゃっかり入手。
誰袖(福原遥) 廣年(ひょうろく) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」22話(6月8日放送)より(C)NHK
しかし、意知はこのブレスレットは証拠として不十分だと判断。ここで引かないのが誰袖です。廣年が自由に使えるお金が少ないことを利用して、こちらから儲かる抜荷商いをこの男に持ちかけることを提案しました。
意知はこの問題はきな臭いものであると注意をうながしましたが、誰袖はこう答えます。
「ここは 日々が戦にござりんすよ? 騙し合い 駆け引き 修羅場。わっちの日々はきな臭いことだらけにござりんす」
誰袖(福原遥) 意知(宮沢氷魚) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」22話(6月8日放送)より(C)NHK
誰袖は吉原で生き抜くことの厳しさも、人間の狡猾さも熟知していたのです。頭をフル回転させて知恵を絞り、物事を強引に進めなければ、自分のような境遇の女は何も手にできないと察していたのでしょう。どこか夢見がちな女性のようにも見えましたが、実際は誰よりも現実を直視していたのです。
陽キャの売れっ子を横目で見る春町の心情に共感
蔦重を見ていると、人をプロデュースすることの難しさを改めて感じます。誰もが自分の提案を快く引き受けてくれるわけではないし、期待していた人材に“仕事を辞めたい”と突然告げられることもあります。さらに、作家同士の揉め事に巻き込まれることも…。
前回の放送回では、春町(岡山天音)は宴で感情を爆発させてしまいました。政演(古川雄大)に自分の作品を模倣した「盗人」と言い放ち、政演の作品を高く評価した南畝(桐谷健太)には挑発的な狂歌で応酬。
そんな失態もさらっと流し、フォローするのが蔦重。蔦重は機嫌を損ねている春町のもとを訪れ、喜三二(尾美としのり)の新作の画付けと新しい偽作を依頼します。また、蔦重は春町の宴での言動を冷静に振り返り、政演がほろ酔い状態であったことを認めた上で、春町に非があることも指摘していました。
蔦重(横浜流星) 春町(岡山天音) 喜三二(尾美としのり) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」22話(6月8日放送)より(C)NHK
春町は「ただの遊びに 拙者一人がカッカきておるのであろうな」「俺は戯けることに向いておらぬのだ!」と自己分析をしていましたが、彼の胸の内に共感できる視聴者は多いと思います。うまくいかない時期に自分の案をベースにした作品で成功した若者が現れたら腹が立ちます。たとえ、それが社会的に許容される範囲内での模倣であっても…。また、明るい性格で、周囲と楽しそうにしている人をそばで見ていると、辛気臭い性格の自分が嫌になり、一方的に恨みつらみを抱いてしまうこともあります。
蔦重は自身の存在価値に悩む春町に“皮肉屋の春町”という独自の道を提案しました。さらに、作り文字の才能に着目し、往来物の一種である小野篁歌字尽(おののたかむらうたじづくし)において才能を活かせるとひらめきました。

春町書(宴で孤立したときの自分を漢字で表現) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」22話(6月8日放送)より(C)NHK

小野篁歌字尽 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」22話(6月8日放送)より(C)NHK
蔦重は江戸の名プロデューサーとも称されますが、その手腕は最近の放送で一層顕著に表れています。作家が自覚していない強みを鋭く見抜き、その才能を最大限に発揮できる機会を提供する。これこそ、蔦重が江戸のメディア王にのし上がった鍵となる要因です。
歌麿が抱える過去の苦しみ
春町は自ら生み出したアイデアを世に送り出すことにこだわる一方、歌麿(染谷将太)は自分で何かを生み出すことに気後れしています。
春町と歌麿の以下の会話は、歌麿がどれほど苦しい日々を歩んできたかが伝わってくるものでした。
「そなたも嫌にならぬのか? 蔦重の都合で 人真似ばかりさせられ。もっと 己の色を出した絵をとは思わぬのか?」
「己の中から出てくる色って… あまり いいものになる気もしねえんですよね 俺に限っちゃ」

唐丸(=歌麿)の母(向里祐香) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」22話(6月8日放送)より(C)NHK
最近の歌麿は蔦重のもとで落ち着いた暮らしを営んでいますし、笑顔もよく見せています。そうはいっても、彼は過去を断ち、心の傷が癒えたわけではないようです。文章や絵には書き手の個性や考え方、生き方がおのずと投影されますが、それゆえに歌麿は自分を出すことを恐れているのでしょう。
歌麿を演じる染谷将太はこの役の人物が背負う負い目や罪悪感といった負の感情を見事に醸し出し、歌麿という人物の奥深さを巧みに表現していると筆者は感じています。いつどのようなときも、どこか寂しそうで、孤独を抱えていて、自己を否定しているようにも見えるのです。
史実において、歌麿は大首絵(顔や上半身を大きく描くスタイル)で高く評価され、独自のスタイルを確立していきます。本作では、歌麿が自分の色を作品にどのように出していくのでしょうか。
本編では、花魁・誰袖や作家たちとの関係を通じて、蔦重がどのように“名プロデューサー”として頭角を現していったのかをご紹介しました。
▶▶江戸庶民は「白米たっぷり」食べていた!? コメ不足の今こそ知っておきたい江戸の知恵
では、現代の米不足とも重なる“お米”の事情を切り口に、当時の暮らしの知恵をひもときます。
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