
江戸女性は「おなら=家の恥」生きていけなくなることも!? 一方で、男性芸人の“屁芸”には爆笑する時代だった
*TOP画像/蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」23話(6月15日放送)より(C)NHK
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は江戸時代における「屁(オナラ)」について見ていきましょう。
屁の音に爆笑する江戸っ子たち
春町(岡山天音) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」22話(6月8日放送)より(C)NHK
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の21話と22話には、蔦重(横浜流星)と第一級の作家たちが屁をネタにして愉しむシーンがありましたね。21話では蔦重や南畝(桐谷健太)らが「屁!屁!屁!」と謡い、踊っていました。また、22話では春町(岡山天音)がふんどし一丁で屁の音を何度も鳴らし、蔦重や作家を笑わせていました。大人が屁を連呼する姿や放屁音をわざと出す姿は滑稽ですが、可笑しく、笑いを誘われた視聴者は多いはずです。
平賀源内のお墨付き!放屁師・花咲男は思いのままに屁を放てたのか…
蔦重の時代に屁ネタで際立って有名だったのが、蔦重が20代前半のときに話題となった放屁師・霧降花咲男(きりふりはなさきおとこ)です。花咲男の人気はすさまじく、錦絵が出るほど話題となりました。錦絵とは現代でいうところのブロマイドのようなもの。私たちも人気芸人のブロマイドを買うことがありますよね。
花咲男の見世物小屋は両国広小路に所在しましたが、彼は江戸だけでなく、大阪の道頓堀でも屁芸を披露したといわれています。
花咲男の芸は多岐にわたりました。屁で犬の遠吠え、夜明けを告げる鶏の声、水車の音を模したり、笛や三味線に合わせて屁の音を放ちました。ちなみに、平賀源内も花咲男の見世物小屋を訪れ、彼の芸を鑑賞しています。源内は花咲男の放屁芸を高く評価し、大いに気に入っていました。
花咲男は一世を風靡したものの、その人気は数年で失速しました。どうやら、多くの人は放屁芸は一度観れば満足したようで、リピーターが少なかったのもその要因だとか。
また、私たちの中にも屁を自由自在に放てるものなのか疑問を抱いている人もいると思いますが、当時においても同様でした。「屁を放つ薬でも飲んだのか」(※1)「屁を本当に出してるわけではないだろう。何か仕掛けがあるはずだ」とさまざまな憶測が飛び交っていました。花咲男が実際に屁を放っていたかどうかは不明です。しかし、少なくとも源内は、花咲男が尻の穴を使って小芝居を披露することを高く評価し、熱心な訓練の成果だと信じていました。
※1 大阪に千種屋清右衛門という薬売りがいた。この薬売りは奇妙な薬ばかり扱っていることで有名であった。「屁ひり薬」という飲んだら屁が出る薬も処方していた。
春町は「屁」を勢いよく放出する芋太郎が主人公の作品を執筆
「べらぼう」では放屁芸を懸命に披露していた岡山天音扮する春町ですが、実際の恋川春町も放屁芸をたいそう気に入っていたようです。
春町は『芋太郎屁日記』(1778年)という黄表紙を出版しています。ちなみに、タイトルの「芋」とは里芋を指しています。現代において屁と聞いて連想する芋といえば薩摩芋ですが、江戸時代には芋といえば里芋でした。
本書の主人公は芋太郎です。名前の由来はいたってシンプルで、芋ばかり食べるから。芋太郎の特技である放屁芸を軸に物語が展開され、芋太郎が屁を放ち人や桶を飛ばすシーンがあります。品はないものの痛快で、おかしく、笑いを誘います。
いつの時代も「放屁」は恥ずかしい。姫君のオナラの身代わり業もあった
江戸時代は屁が笑いの種であったものの、現代以上に屁を人前ですることは「恥」「品がない」と考えられていました。品川のある遊女は客前で屁を放ち、自殺騒動を起こしたんだとか…。また、娘が人前で屁をすると「放屁娘」というあだ名を付けられました。このあだ名は冗談交じりのものではなく、家全体に汚名を着せるほど深刻なものでした。
娘が人前で屁を放つ=一家の恥とされていた当時、屁の身代わり業がありました。屁負比丘尼(へおいびくに)と呼ばれるこの職業は表向きは雑用係ですが、姫君が屁をしたら「私がいたしました」と申し出たり、恥ずかしそうに振る舞ったりしました。
さらに、前述のように、屁芸師・花咲男は多くの江戸っ子の笑いを誘う人気者でしたが、彼の存在を快く受け入れた人ばかりではありませんでした。屁で金儲けすることを厳しく批判する声、人前で屁をする芸を下品だと咎める声もありました。
本編では、江戸の人々が「屁」で笑った庶民的な娯楽文化についてお届けしました。
▶▶蔦重、ついに独り立ちか。「生まれや育ちで人の価値は決まらない」と”吉原もん”蔦重が日本橋進出にこだわった理由【NHK大河『べらぼう』第23回】
では一転して、偏見にまみれた江戸社会の現実と、蔦重が“吉原もん”として背負う覚悟について深掘りします。
参考資料
恋川春町『芋太郎屁日記咄 』1778年(東京都立図書館 TOKYOアーカイブ)
佐藤清彦『おなら考』 青弓社 1994年
左巻健男『面白くて眠れなくなるウンチ学』 PHP研究所 2022年
水戸計『お江戸はつらいよ』彩図社 2023年
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