47歳、高齢出産と甲状腺。疲れやすいのは努力が足りないせいじゃなかった【100人の更年期#9】
一般に、閉経の前後5年を更年期と呼びます。日本人の閉経の平均年齢は50歳なので、45-55歳の世代は更年期に当たる人が多いもの。身体の不調に苦しみ「更年期障害」の状態に至る人もいます。
初潮を迎えた人ならば必ず誰しも迎える閉経、そして更年期ですが、面と向かって「更年期の具合はどう?」とは話しにくいものです。
私ってもう更年期なの?
みんなはどうなの?
この状態、もっとひどくなるの?
主婦の友社オトナサローネ編集部は、ごく普通に日々を暮らす同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材していきます。(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)
【100人100通りの更年期♯9 47歳・オーガニックフード営業】
プロフィール
47歳。10歳年上の夫、5歳の息子と都内に暮らす。中堅小売チェーン在職中、31歳でオーガニックフードに出会い、 38歳のときに小さな輸入商社に転職、社内にオーガニック部門を立ち上げる。42歳での出産を経て現在の会社に再転職。 妊娠中に橋本病が判明、現在も治療中。
イライラを子どもにぶつけてしまい、そんな自分に更にイライラする
いま、私は47歳で、息子が5歳、保育園の年長です。高齢出産なので、育児のいちばん大変な時期と更年期が重なってしまいました。
私はいま社員6人のオーガニックフードの輸入会社で、東京支社の営業を1人で担当しています。支社といっても私1人なので、在宅で事務作業をして、小売店にアポイントを入れては、自宅から直接営業に回ります。営業3人で全国をカバーしているので出張も結構あります。
もともと私は時間のやりくりがものすごく下手。なので、自分の段取りが悪くてイライラすると、ついつい子どもにぶつけてしまい、反省して、それが原因でまたイライラして……。時間との戦いは働く女性の宿命かもしれません。
私が自らこの会社で働きたいと惚れ込み、自分を売り込んで始めた仕事で、人間関係はとても良好、しかも扱うのは大好きなおいしいフードなので、この上なく楽しい仕事なのですが、それでもストレスはゼロにはなりません。
順調だった生理がいきなり乱れ、フラフラの貧血に
42歳で息子を出産した私は、45歳まで2年半授乳していました。断乳して1ヶ月でぴったりと生理が再開しましたが、順調だったのは最初の2回だけで、そのあといきなり乱れました。
こないなと思っていたら突然きて、2日で終わって、また3日後に始まったり。
小学校5年の初潮から妊娠前まで安定した28日周期で、5日で終わっていたので、これが人生ではじめての生理不順です。
46歳のときには、2日目くらいの出血量が2週間以上続くこともありました。夜用ナプキンを2時間ごとに交換、もう貧血でフラッフラ。ちょうど出張で飛行機に乗る機会が増えた頃で、漏れていないか本当に落ち着きませんでした。
顧客の一人、55歳の女性とプライベートでもよく食事をするのですが、彼女から「ちょっとずつ不調が出てくる。貧血でふらふらになるような生理もある」と聞いたことがありました。その半年後に私が同じ状態になってしまった。彼女はもともとやせ型なのですが、貧血でやせ細っちゃって。いっぽう、私は授乳中はガリガリになり、断乳してからはすごく太ったので、人それぞれですね。
ちょうどその頃、「ママ、お顔を拭いて」と言われる発汗が始まる
46歳のころ、息子が保育園年少から公文式の塾に通い始めました。最初は親が横について見守るのですが、ある日、顔が急に熱くなって汗がだらだら出たんです。
突然かーっと暑くなり、暑い、暑い、と思っていたら、汗がぽたっ、ぽたっとたれ始めました。
それを見た息子に、「ねえ、ママ、お顔がびしょびしょだよ? お願い、拭いて?」と言われて。
それまでも暑くてのぼせ気味になることはありましたが、気にとめず、普通に部屋の温度が暑いのかなと思っていました。
いえ、部屋が暑いのだ、私の側は普通だと思い込もうとしてたんでしょうね。でも、息子にも言われるくらい、客観的に明らかなレベルで汗が吹き出て、否応なく自覚しました。
それから、暑くなって大量に汗をかいたら急に収まり、汗で体が冷えてということが増えました。
妊娠中に発覚した橋本病。「持病」を持つ精神的ショック
私は妊娠中の41歳、検査で甲状腺の病気の一つ、橋本病と判明しました。甲状腺に慢性的に炎症が起こる自己免疫疾患で、現在の医学では原因は判明していません。成人女性の約10人に1人が素質を持ち、その中の4~5人に1人が甲状腺機能低下症に進むとされます。
甲状腺は身体の代謝率を制御する甲状腺ホルモンを分泌します(日本内分泌学会)。橋本病はこの分泌が下がるので代謝が落ち、疲れやすく、太りやすくなります。そのせいでしょうか、妊娠中には体重が増えなかったのに、産後に増えてしまいました。
もともと私は性格が元気な割に身体が疲れやすいタイプでした。どこからが橋本病だったのか、もう自分ではわからないのですが、自分のなまけ癖やメンタルの問題で疲れるのかと思っていたら、疾患が原因だったんですね。
今でも疲れやすいのですが、正直すでにどこからが更年期なのかもわかりません。甲状腺トラブルはありふれた疾患ですから、みなさんも疲れやすいなと思ったら調べたほうがいいですよ。
大学の先輩にも妊娠中に橋本病が判明した人がいて、最近よく情報交換します。私は病気が発覚した当初は「ちょっと薬を飲めば治るだろう」と軽く考えていましたが、その後甲状腺機能低下症の状態になってしまい、この先一生服薬が必要になりました。もう治らないんですね。一生薬を飲まないとならない持病ができてしまったことがとても悲しかった。
専門医にかかるのは大切。薬は飲み方もかなり重要です
その後、42歳で甲状腺機能低下症だと診断されてから3年もの間、私は専門性の重要さに気づかず、専門外の医師にかかっていました。「薬は1日のいつ飲んでもいい」「食べ合わせの悪い食べ物もない」と聞いて鵜呑みにしていたんです。
が、実は朝起きてすぐの空腹時、吸収のよいときに服薬し、かつ、大豆製品など特定の食べ合わせに注意する必要がありました。「低下症は一生治らない」ことも教わっていなかった。
指導がなかったせいで、せっかく服薬しても低下症の症状である「疲れやすさ」が改善せず、「薬なんて効かないな」と不信感が高まり、1年ほど治療を休んでしまいました。この時期の疲れやすさといったらそれはもう半端なかったので、今となっては悔やんでいます。
というのも、当時、育休中に勤務先が事業撤退してしまい、産後4か月でいきなり転職を余儀なくされて。仕事があるだけラッキーでしたが、とにかく初めての育児と新しい仕事が同時に降ってきて、夜帰宅するなり倒れこむレベルに疲れ果てて。あまりのしんどさに「セサミンとか、黒酢卵黄にんにくでも定期購入して飲もうか…」と真剣に考えていたくらい。
もうだめだと思い詰めるギリギリまできてやっと、自分が治療をサボっていたことを思い出しました。ちゃんとした専門医を探して、話を聞いてみようと思いなおし、やっと今かかっている専門医に出会いました。案の定、きちんと指導を受けたら、疲れやすさは劇的に改善されたんです。不調が強ければ強いほど、その分野の確たる専門医にかかることはとても重要だなと実感しました。
でも「更年期障害」とは診断されたくない、複雑なオンナゴコロ
最近の定期通院で、「どうですか、おかわりないですか」と聞かれたとき、「薬は効いていると思うけれど、疲れるし、暑くなるし、生理がダラダラ長引きます」と訴えてみました。
すると、「もう更年期障害の時期だから、女性ホルモン値を調べますか?」と聞かれました。
このとき気づきました。私、更年期障害だと認定されるのはイヤなんだなと。
きっと、認定されるのも、薬が増えるのもイヤなんだよね。
いま、仕事だってそんなに激務ではないし、ストレスも低い。人生の中でいちばん好きなことを好きにやらせてもらっているので、このままこの状態を続けて、いつか終わるときまでうまくやりすごしたい。
私、30代のうちはもう結婚も出産もないなと思っていました。
でも40歳で今の夫と出会い、41歳で結婚し、すぐ妊娠、出産。貧血で倒れて、がりがりにやせて、それでもオーガニックフードをかついで都内を歩いて、ここまでうまくやりすごせたのだから、更年期も同じようにうまくやりすごせるといいな。
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