「発足」って正しく読めますか?意外に間違えるNG日本語10
どれも知っている漢字なのに、熟語になった途端読めないことってありますよね。そんな読めそうなのに間違っていそうで発音できない熟語を10個集めてみました。今日は有名な文学作品から引用。つい飛ばしてしまう次の下線部の文字、読めますか?
1・逐次
尾籠に亘るがラーゲリでもそうであったが此処でも塵紙の類は一切支給がないので日本人は一様に後始末に苦労した。 携行の古シャツ等を逐次処分してこれにあてたがこれも限りあること。 窮すれば通ずで考えついたのが被服の修理提出であった。
米原万里『パンツの面目ふんどしの沽券』より引用
答え
解説
「逐一(ちくいち)報告してよね」の「逐」です。順序を追って順々に、という意味ですね。
2・和む
和夫も人の情けにふれたことはなかった。 純真無垢な心をもった少年と話をしていると、なぜか心が和むのである。 和夫は今年三十六になる。
上野正彦『死体は知っている』より引用
答え
解説
小学生の漢字なのに読めないことで有名。中学生のテストでもよく出ます。
3・如実
素直な感じの絵だった。 何事にも控えめな彼女のおとなしい性格がそこには如実に現われていた。 鮎太がそこに立っていると、信子と貞子がやって来た。
井上靖『あすなろ物語』より引用
答え
解説
「にょじつ……でいいんだよね?」という確認が多い言葉。そのまま読んでOKです。「実際」「その通り」「思った通り」のような意味があります。
4・風情
目抜き通りはいずこも同じ車の洪水であるが、一歩横路地や裏通りへ入ると、地方都市の古いにおいとたたずまいが残っている。 軒を接した小住宅の間から近く迫った山の緑が覗くのも地方都市の風情である。 路地に盆栽の鉢が並べられ、家の奥に庭が見える。
森村誠一『殺人の組曲』より引用
答え
解説
「ふうぜい」ではありません「風情(ふぜい)がある」の風情ですね。
5・無分別
三四郎もこれにはあきれ返った。 あまり無分別の度を通り越しているので意見をする気にもならない。 そのうえ本人が悄然(しょうぜん)としている。
夏目漱石『三四郎』より引用
答え
解説
「無」をなんと読むのか自信がない人が多いようです。この場合は「むふんべつ」ですね。
6・朗らか
光と、運動と、科学を極端に生かすことの出来る新鮮な芸術を、子供から遠ざけていることはまったく残念で不幸なことだ。 私は何にしても子供と、家族とともに太陽の下で朗らかに笑いたい。
小出楢重『大切な雰囲気』より引用
答え
解説
こちらも、簡単な漢字なのに訓読みになった途端、分からなくなってしまう言葉です。できたら「書ける」ようにしたいもの。
7・発足
彼はZ局をやめて〈アンクル〉を発足させたんだが、その前からですよ。 彼はそういいませんでしたか?
ナポレオン・ソロ・シリーズ『14 犯罪王レインボー』より引用
答え
解説
「はっそく」でもOK。迷う人が多いのですが、どちらの読み方でも大丈夫です。漢語では「発」をハツと読み、呉音で読むとホツです。
8・遊説
警視庁には『SAT』などと呼ばれる対テロ特殊部隊があったが、外国の、しかも北朝鮮などの領土に逃げられてしまっては、手も足も出せなかった。 総理大臣は遊説先で、NHKの記者に聞かれてはじめて事件を知った。 首相は『コメントはくわしい情報が入ってから』と答え、遊説を続ける愚挙に出た。
賀東招二『フルメタル・パニック!01 戦うボーイ・ミーツ・ガール』より引用
答え
解説
意見・主張を各地に説いてまわることです。特に政治家が各地を演説してまわることを言います。公費の使い方に色々問題があるようですが、「遊」は「遊ぶ」の意味ではなく、「歩き回る」の意味です。
9・律儀
律儀にその場で待っていたぼくと先輩の前に、嵐ちゃんが戻ってきた。よほど急いだのか、はぁはぁと息を切らしている。
沖田雅『先輩とぼく 02』より引用
答え
解説
「りつぎ」ではありません。「律儀(りちぎ)な人」っていいますよね。その「りちぎ」です。
10・流転
笑顔は見せていたが、やっぱり雄一郎は心から笑い切れないものがあった。 明日からはじまるであろう、三千代の流転が胸に重くのしかかっていた。 やがて、南部斉五郎が倶知安へやって来た時、雄一郎はこの一部始終を話して、三千代を引きとめられなかったことを詫びた。
平岩弓枝『旅路(下)』より引用
答え
解説
「りゅうてん」ではなく「るてん」と読みます。流布もそうですね「りゅうふ」ではなく「るふ」です。
どうでしたか?あやふやな読み方をしている漢字はありませんでしたか?小説などでは、前後から意味を判断し読み進めてしまうため、漢字が読めないままになっていることがよくあります。今回の熟語はどれも中高生レベル。しっかり覚えてしまいましょうね。