浜崎あゆみ「身を滅ぼすほどの愛」でわかる「低迷」の本当の理由

2019.08.16 LIFE

浜崎あゆみ(以下、あゆ)の暴露本とも言われた「M 愛すべき人がいて」(幻冬舎)。作家の小松成美氏が「事実に基づくフィクション」として、あゆの過去の恋愛について書いたものです。早速読んでみましたが、「どこが暴露本なんだろう」というのが私の感想でした。

 

私は特にあゆのファンではありませんが、彼女がプロデューサー(当時)の松浦勝人氏と交際していたことはなんとなく聞いたことがあります。そもそも、時代の寵児的なプロデューサーと歌姫の恋愛というのは、それほど意外性はありません。

 

ところで、「暴露本」の定義とは何か?

私が思うザ・暴露本というのは、女優・石原真理の書いた自伝「ふぞろいの秘密」(双葉社)。田園調布に生まれ、美智子さまも通われたお嬢さま学校出身の彼女がいかにして芸能界に入ったかなど、来歴が書かれています。

 

不倫相手の安全地帯・玉置浩二からの猛アプローチ(赤い下着をプレゼントされたそうです)、玉置のDV、二人でホテルから飛び降りて死のうとしたことなど、衝撃の事実に多くのページが割かれていますが、その後は激しい男性遍歴ばかりが箇条書きで書かれています。

 

彼女の代表作でもある「ふぞろいの林檎たち」(TBS系)で共演した中井貴一、時任三郎。

 

柳沢慎吾も共演者なのに、そこはスルーなのがポイントです。

 

この他にも、田原俊彦、明石家さんま、石黒賢、郷ひろみ、吉川晃司などなど。男性経験が豊富なことがプラスではない日本社会で、これらを公表すればマイナスの評価がされることもあるでしょう。

 

自分も悪く言われるかもしれないけれど、相手にもそれなりのダメージを与えるという刺し違える精神が、暴露本の基本ではないでしょうか。

いっぽうの「M」、その内容はどうだったのか

「M 愛すべき人がいて」では、芸能人のひとりにしか過ぎなかったあゆが、松浦氏と出会い、時代を代表する歌姫に成長していく姿が描かれています。

 

10代の少女らしく、あゆはまっすぐに松浦氏を愛していますし、松浦氏も強い指導力で、あゆをスターダムに押し上げた。どちらも損をしていないのですから、暴露本とは呼べないと思います。

 

それでは、本書をなんと見るか。

 

私はこれはあゆの同世代、全盛期のファンに向けてのライナーノーツだと思いました。ライナーノーツとは、CDに入っている曲の解説書。解説を読むことで、歌への理解が深まったり、期待が高まるのです。

 

年齢とともに音楽を聴く習慣をなくすというのは、よくあること。しかし、若い時に聞いた曲というのは、自分でも驚くくらい、はっきり記憶されているもの。

 

今、何かと音楽業界は厳しいので、新規の顧客を開拓するよりも、往年のファンに戻ってきてもらうほうが、作戦として考えた場合、効率的と言えるのではないでしょうか。

 

本書の最後のページに、あゆは「身を滅ぼすほど、ひとりの男性を愛しました」と言葉を寄せています。

 

あゆは松浦氏との交際で「身を滅ぼした」のか?

身を滅ぼすこともいとわぬほど、松浦氏を愛したという意味でしょうが、本書を読むかぎり、あゆが追い込まれていったと私は感じませんでした。

 

もし、あゆのスター人生に「身を滅ぼす」ような出来事があるとしたら、それは松浦氏と離れてからなのではないかと思うのです。

 

松浦氏と別れた後、あゆはTOKIO・長瀬智也と交際を始めます。マスコミの前でも手をつなぐなど、堂々とした交際ぶり。結婚も噂されますが、破局してしまいます。この後から、あゆの男性関係はかなり混沌としてきます。

 

デザイナーである外国人男性(この男性は、あゆとのセックスを週刊誌に暴露)、マネージャー、宝石デザイナー、バックダンサー。プロモーションビデオに出演したオーストリア人俳優と結婚しますが、1年余りで破局します。

 

お次はバックダンサー・内山麿我と交際しますが、内山に妻子がいることがわかり、破局。今度は10歳年下、アメリカ人の医大生と結婚しますが、これも三年余りで離婚しています。

 

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