
平安時代の人々も「精神病」になっていた。 とくに女性は、がんじがらめで自由なし。「そりゃストレスたまるわ」
*TOP画像/さわ(野村麻純) 大河ドラマ「光る君へ」17回(4月28日放送)より(C)NHK
『光る君へ』ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は平安時代の「メンタルヘルス」について見ていきましょう。
前編の『平安時代も一緒! 男ウケの良さは「コミュ力」と「もう1つの能力」が必須! 何が得意だとにイケメン達にモテた?【大河ドラマ『光る君へ』#17】』に続く後編です。
平安貴族はストレスフルの社会に属していた
現代社会はストレス社会といわれています。メンタルクリニックに通院しながら働いている人や心の病で休職している人も多くいます。また、不登校の児童・生徒は年々増えており、珍しい存在ではありません。
平安社会について現代の価値観では語れませんが、平安貴族がストレスフルの社会に属していたことは確かでしょう。
平安貴族といえば、自宅の庭で池や草花を眺めながら歌ばかり詠んでいるイメージがありますよね。「彼らの悩みは恋愛の悩みくらいでうらやましい」「忙しなく働きたくない。平安貴族になってのんびりしたい」などと思ったことがある人もいるはず。
しかし、平安貴族の男性は無職というわけではなく、宮中で働いていました。早朝から会議で多忙を極めていましたし、上司に気遣うことも当然ありました。また、儀式では細やかなルールや慣習に従い、そつなくこなさなければなりません。さらに、一家の明暗が決まる激しい政争が行われていました。人間ですから政争に負けたらどうしようという不安もあったはずです。
(現代では会議ばかりの日常にうんざりしてしまう会社員、出世競争に疲弊してしまう会社員もいます)
上流貴族の女性については屋敷から出ることはほとんど許されていませんでした。日光を浴びたり、身体を動かしたりする機会は極端に少なかったはず。
また、一夫多妻制の当時、女性は夫や恋人に悩まされることもありました。社会的に容認されているとはいえ、女性にとって夫が別の女性の屋敷に通う姿は心悲しいものでした。また、妾の立場にある女性たちは第一夫人に嫉妬するようなこともあったようです。
平安貴族のメンタルに着目される機会はあまりないものの、貴族たちが置かれていた状況を思うと、精神のバランスを崩す人がいないと考える方がむずかしいのではないでしょうか。
平安時代にどのくらいの人たちが心の病に悩んでいたのかは分かりません。しかし、奈良時代において心神喪失者の犯罪はその刑罰を軽減するといった条文が「大宝律令」にすでに含まれています。このことからも、平安時代には心の病気が一般的にすでに周知されていたことは確かでしょう。
不眠症に悩む人もいた。いつの時代も眠れない夜はつらい
平安時代には不眠症に悩む人もいました。当時の絵巻物『病草紙』に「不眠の女」という絵があります。
この絵には複数人の女性が描かれており、1人の女性以外は眠っています。この眠れない女性は身体を起こし、時間を指折り数えています。
女性は相部屋にいることから女房と考えられるものの、どのような立場にある女性なのか定かではありません。
また、当時の貴族女性の中には不眠に悩んだ人が多くいたと考えられます。身分の高い女性は御簾の中で日中も過ごし、日光を浴びる機会はほとんどありませんでした。蹴鞠などの遊戯も女性は行いませんので、身体を極端に動かさなかったはずです。
(不眠外来に行くと、ドクターから「日光浴をしなさい!」「毎日、少しでも散歩しなさい」とお叱りを受けそう)
モノノケは集団ヒステリー? 神経衰弱も原因なのか
平安時代、狂気は人間の内側から魂が抜け、怨霊や生霊などが入り込み、支配された状態であると考えられていました。人の心が怨霊などと入れ代わったと考えられていたため、治療のために僧侶が呼ばれ、加持祈祷が行われていたのです。現代では、当時のモノノケを集団ヒステリー、神経衰弱とみなす識者も少なくありません。
不安がはびこり抑圧された社会では、集団ヒステリーが起こります。例えば、1690年代のアメリカ・ニューイングランドで起きたセイラムの魔女裁判も集団ヒステリーによって起きたといわれています。天災が起きたり、病気になったりすると、「魔女のせい」とし、自分が好かない隣人に対して魔女の疑いをかけていました。
当時のアメリカ北東部においても過度な信仰や禁欲主義などによって抑圧された雰囲気がありました。彼らはこうした雰囲気に内心は疲弊していたのでしょう。また、科学も発達しておらず、科学的に解明されていない自然現象がほとんどでした。
セイラムの人たちが病気の原因を魔女のせいにしたのは、平安時代の人たちがモノノケを病気の原因にしたのとおおまか同じことですよね。
岩倉大雲寺は心の病を治す場所として知られていた
アルコール依存症のような症状に悩む人、今でいう統合失調症のような症状を抱える人は平安時代にもいたようです。しかし、こうした症状を抱える人に対し、カウンセリングや投薬といった治療はなされませんでした。
平安時代、岩倉に所在する大雲寺には心を病んだ人たちが加持祈祷を受けに訪れました。
また、岩倉大雲寺の霊泉は後三条天皇の第三皇女・佳子内親王の症状を改善させたと伝わっています。彼女は髪を振り乱して衣を裂くなど、今でいう精神分裂症に似た症状を患ったそう。
天皇は神仏に平癒を祈願すると、大雲寺の十一面観世音菩薩と閼伽井の水が効くというお告げを受けました。このお告げのとおりにしたところ、この姫の症状が回復したといわれています。
江戸時代になってもこの地に病を癒すために足を運ぶ人は後を絶ちませんでした。
ちなみに、精神医学が盛んになり、精神病院ができるまでは、お寺がメンタルの不調に悩む人たちを受け入れていたそうですよ。とはいえ、20世紀に入っても、心の病を患った人は心ない扱いを受けるケースが国内外においてほとんどでした。
参考資料
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