もしかして私、口が臭い?歯科医が教える簡単なニオイ対策とは

アンケートを取ると、「自分のにおい」で気になるもののトップは常に「口臭」。夏場は「汗くささ」も激増しますが、1年通じて安定的にみんなが気にしているのは口のにおいです。日々、口臭にまつわるさまざまな記事が配信されますが、本当にそんなにみんな口が臭いんでしょうか…? 歯科医師の山嵜(やまざき)智浩先生に教えてもらいました。

 

「治療が必要」なレベルは10人に1人

ぼくは東京・立川郊外の小さな医院で、かみ合わせを重視した歯科治療を行っています。土地柄お年寄りも多いので、口臭についての相談もよく受けます。が、ぼくの歯科でも患者さんでも「これは治療が必要」と思う口臭は10人のうち1人程度しかいません。

 

人間の口にはまったくの無臭という状態はなく、誰でも臭いはあるものです。起き抜けの口が臭いのは生理的にごく当たり前のことですし、向かい合う距離の近い家族ならば気になっても、仕事の関係ならそれほど気になっていないものです。みなさんそれほどは気にしなくて大丈夫です。

 

とはいえ、実際に「口が臭いおじさん」はみなさんの周囲にいます。臭いの軽重はあれ、口臭がある人には共通点があります。全員「歯の間」に汚れが残っているのです。

 

ぼくは「歯は磨かなくていい。歯の間を磨いてください」と指導しています。歯と歯の間にたまる汚れこそが、虫歯、そして不快な口臭を引き起こしているのです。

 

必要なのは「フロス」と「ブラシ」

では、どうすればその汚れは落とせるのか。まず、いますぐ「デンタルフロス」と「歯間ブラシ」を買いにいってください。どちらも駅前のドラッグストアにあります。どれを買うのか迷うなら「小さい」「細い」ものから試してサイズアップしてください。「フロスとブラシ、どちらを使えばいいですか?」と聞かれますが、どちらにもいい点があるので両方使いましょう。

 

まず、フロスからご説明しましょう。すでに使っているという人は、残念ながら、口臭が気になっている時点で使い方が間違い。そもそも、9割くらいの人は間違えています。

 

日本には「つまようじ」の文化がありますから、みんなフロスをつまようじの仲間と考えていて、歯の間にパチンと通して、つまったものを取って終わりにしているんですね。

 

これではせっかく手間をかけている意味がありません。いちど歯間に入れたら、フロスを持った手の向きを変え続け、歯のいろいろな面をこすることが重要です。歯間1つにつき20回くらいギコギコとやってください。

 

歯科で「歯肉にフロスを押し付けてこすると歯肉を傷つけるのでNG」と教わったことがある人もいると思います。ぼくは逆に、「歯肉にフロスをぎゅっと押し付けて、歯の根元もこする」と指導をしています。

 

理由はシンプル、歯肉に覆われた根元のほうが汚れがたまるからです。また、治療の経験上、仮に血が出たとしても、3日続ければ歯周ポケットに詰まった汚れは外に出て、歯肉の状態は改善します。血が出る時点でその歯には菌がついていますから、よりケアが必要なサインなのです。

 

歯間ブラシもぜひ今日すぐ買いにいってください。最近はコンビニにも置かれています。はじめて使う人、久しぶりに使う人は、歯間ブラシを歯に通したら、そのまま先端を鏡で見てみてください。先端に白い歯垢がつくはずです。これこそが口臭の原因です。

 

この歯垢が完全に取れている人ならば口内はほぼ無臭ですし、口臭のある人は例外なく歯垢がついています。

 

「内臓が悪いので口が臭い」は実はレア

よく「内臓が悪いので口臭が出る」と言う人がいますが、ぼくの経験ではそういう患者さんはいません。糖尿病など特定の病気ならば特有の匂いがありますが、いわゆる口臭は別です。口の中はどれだけお手入れしてもやりすぎということはありません、たっぷりやってください。

 

こうした徹底的な歯間のクリーニングは、毎日やるとなるとめんどうで続かないので、週2回程度で大丈夫です。歯間の汚れが発酵のような状態になって、口臭の原因菌が繁殖するまでは3日ほど猶予があります。その間に落とせば何とかなる。汚れを貯めこまないことが大事なのです。

 

さて、歯間がよくクリーニングされている場合、次に気になるのが歯の表面です。これも大抵の人が間違えています。

 

歯は「みがく」のではなく「なでる」

まず、「歯みがき」という言い方がよくない。むしろ「歯をなでる」という名前にすべきです。というのも、考えてみてください、少しでも力を入れると歯ブラシの毛先は外を向いてしまいますよね?

 

毛先がいちばん汚れ落とし能力を発揮するのは、掃除の箒と同じで、力が入っていない状態。「みがく」はNG、「なでる」が正解です。

 

また、「歯なで」にかける時間もみんな短すぎる。最低10分、余裕のある週末ならドラマでも見ながら延々と30分くらい「なでて」ください。ぼくも時間さえあれば20分から30分はずっと歯の表面を軽くなでています。

 

よく「歯ぐきから血が出たら歯周病のサイン」と言われますが、これはその通り。健康な歯ぐきであればブラシでかなり強くこすっても血は出ません。

 

「血が出ている場所はそっとして薬を塗ったほうがいいですか?」と聞かれることもありますが、「ちょっと我慢してどんどん磨き、より血を出す」が正解です。血が出る場所を10分くらいかけてみがいてください。血が出るということは、悪い部分にブラシが届いているということです。それでOKです。

 

歯ブラシは柔らかいほどいいです。とにかく柔らかいものを使い、表面をみがく。電動歯ブラシを使う場合は、より軽く持ち、一切力を入れないようにしてください。表面がよく磨ける分だけスッキリ感があるので歯間の汚れが放置されがちです。歯間には必ずブラシ、フロスを使ってください。歯みがき粉は、僕はスッキリ感で満足して汚れをそのままにしまうリスクを重視し、使うようには指導していません。マウスウォッシュ類も同様です。

 

「舌みがき」はおすすめしていません

ぼくがやめたほうがいいなと感じるのは「舌みがき」です。舌の汚れが口臭の元だと考える先生もいますが、ぼくの経験では舌が臭うくらいなら確実に歯垢も取れていません。むしろ歯の間を掃除してほしい。

 

舌の汚れ、舌苔は、取るとスッキリしますが、このスッキリ感に盲点があります。口臭の専門家によると、舌上面は痛覚が弱いので、だいたいの人はこすりすぎてしまうそうです。

 

少しでもこすりすぎた場合、舌表面から粘りのある修復物質が出ます。この粘りが歯垢や臭いの原因をキャッチするので、むしろ口臭は悪化します。「力を入れないブラシで、2回だけなでる」というような節制ができる人ならいいのですが、大抵できないので、やめたほうがいいのです。

 

このほか、口臭の原因には日頃からの口呼吸や、ストレスによる口の中の乾燥などもあります。適切に唾液が出ていなかったり、口の中の環境がよくない場合に口臭が起きるのです。

 

歯間の汚れは、それほど大変な努力をしなくても、確実に自分でコントロールできます。「もしかして自分には口臭がある?」と気になる場合、あまり独りで抱え込んで悩まず、ぜひ近所の歯科に聞いてみてください。ぼくたちは毎日毎日いろんな人の口の匂いと接していますから、患者さんの口内の状態も見ながら適切なアドバイスができます。内臓が悪いのかな?歯周病?と迷う前に、ぜひお近くの歯科医を頼ってください。

 

お話/かしの木歯科 山嵜(やまざき)智浩先生/鹿児島県出身。2002年日本大学歯学部卒業後、法人歯科医院2カ所に勤務。
2010年に東京都東大和市上北台に「かしの木歯科医院」を開業(多摩モノレール桜街道駅・上北台駅から徒歩8分)。
特に歯と歯のかみ合わせに関する造詣が深く、ロジカルでわかりやすい治療指針に遠方からの口コミ患者も増加中。
かしの木歯科医院サイト

 

*なお、口腔にまつわる情報が必要な人は、ぜひ日本歯科医師会のサイト「テーマパーク8020」をご参照ください。難しいこともわかりやすく解説されています。

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