「助かります」は実は失礼?軽率な日本語の2つのNG
最近、立場が下の方から、このような文が入ったメールが届きました。
「先生のその姿勢、見習いたいな、と思いました。」
私は、ちょっと違和感を覚えたのですが、私情も入るのかと思い、こっそり他の方に聞いてみたところ、やはり同じ感想でした。
友人関係のような対等な場合なら「先生のその姿勢、見習いたいな♪と思いました。」のように、「な」の後に音符マークが入っていてもいいくらいなのですが、この「な、」は文法的にもNGで、敬語としても微妙です。内容が褒め言葉なので、逆に苦笑いしか出ません。今回は、目上の人には使わない方が良い言い回し、目上の人には使わない方が良い言葉のうち、うっかり使ってしまいがちなものを紹介します。
「親しさ」を出そうとして「軽率」になる場合も
- 先生のその姿勢、見習いたいな、と思いました。
これを書き直してみますね。
まず、「、」を打つとしたら「と」のあとです。これは文法的な訂正ですね。
- 先生のその姿勢、見習いたいなと、思いました。
助詞抜けも失礼なので「を」入れます。助詞を入れたことで「、」は不要になります。
- 先生のその姿勢を見習いたいなと思いました。
そして「な」は軽々しいので省きます。
- 先生のその姿勢を見習いたいと思いました。
どうでしょう?この2つの文が持つ印象の違いが分かりますか?
- 先生のその姿勢、見習いたいな、と思いました。
- 先生のその姿勢を見習いたいと思いました。
同じことを伝えたいのに、随分印象が変わりますよね。
このように、敬語の中でも親しみを表そうとして「な」を入れたいという気持ちは分からなくもないのですが、変なところで力を抜くと逆に不自然さが目立ち、それを失礼に感じる人もいるということを覚えておきましょう。
また「こうしてくれると助かるな」「こうしてくれたらうれしいな」というくだけた言葉を、丁寧に「助かります」「幸いです」とする場合も見受けられますが、これらも目上の人には使わない方が良い言葉です。この二つは「対等」な関係にある場合に使います。そしてビジネスシーンでは、外に向けてはほとんど「対等」な関係などないと覚悟して書いた方がいいのです。
「助かります」は対等な立場で使う言葉
- 明日の朝までにこの書類を用意していただけると助かります。
「助かります」は、部下などに対して目上の人が言う「丁寧語」です。
間違っても下の立場の人が目上の人に向かってお願いする時に使う言葉ではありません。
「わぁ、助かります~」
たまに、お礼として目上の人、先輩などにこんなことを言っている人を見かけませんか?
これは「ありがとうございます。」と言うべきなのです。私は、可愛らしさを出したいのであれば言葉より態度の方で工夫したら良いと考えます。
「幸いです」も対等な立場で使う言葉
「幸いです」は「助かります」より丁寧さが上ですが、「助かります」と同様、立場が下の人、対等な立場の人に使う「丁寧語」です。「幸い」というと少し固く聞こえますが、お願いする言葉としては、丁寧語止まりで尊敬語には入りません。
お願いするならお願いすること
では、目上の方にお願いする時には「〇〇してくださると助かります」「〇〇してくださると幸いです」の代わりに何を使えばいいのでしょう?
答えはシンプルで「お願いします」でOKなのです。
例えば
- 明日までにお返事をいただけると助かります。
- 明日までにお返事をいただけると幸いです。
と言いたい場合は、
- 明日までにお返事をくださいますよう、お願い申し上げます。
で良いのです。
「幸甚です」はハードルが高い
しかし「お願い」はあくまで「お願い」なので、もう少し遠回しに言いたいもの。「そうしてくれると助かる」というニュアンスを入れたいですよね。そこで、同じく、「〇〇してくださると助かります」「〇〇してくださると幸いです」を表す時に「幸甚です」を使う場合もあります。しかしこれはハードルの高い言葉です。そして、かなり固い印象を受けますので、他の文とのバランスも取りにくくなります。
女性には「幸いに存じます」が相応しい
女性の場合は、「幸いに存じます」を使うようにすると、他の文とのバランスも良くなりますし、印象としても良いと思います。
- 明日までにお返事をいただけますと、幸いに存じます。
このように使うと、「お願い申し上げます。」よりも間接的になり、「幸甚です」よりもソフトになりますので、女性には向いていると思います。
【こんな日本語はNG!#日本語の誤用】
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