尊敬語のつもりで「やられた」って言ってない?それ猛烈に失礼です!

「先生、〇〇ってやられたこと、ありますか? 面白いらしいですよ」
「この前、〇〇をやられたっておっしゃっていましたが、どうでしたか?」

このように聞かれたことがある人、言ったことがある人は結構多いのではないでしょうか。
もう少し具体的な言葉を当てはめてみましょうか。

「先生、グランピングってやられたこと、ありますか? 面白いらしいですよ」
「この前、ボルダリングをやられたっておっしゃっていましたが、どうでしたか?」

どうでしょう?むしろ「え?いつもそう言っているけど、何かおかしいの?」とドキッとした人が多いと思います。
今日はこの言葉がどうして失礼なのか、ひもといてみましょう。

 

元の意味は「する」

「やられる」の言い切りの形は「やる」です。遣る、行る、と書きます。

やる

1 その場の勢い・なりゆきにまかせて他方へ行かせる。
2 与える。
3 同等以下の者のために労を執り、恩恵を与える。
4 物事を行う。する。
5 動作が完了する意を表す。

広辞苑第6版

などの意味があり、私たちが普段会話文で使う現代語としては、4の意味で使っています。

例えば

勉強をやる
野球をやる
休みでもやる。

などのように使いますね。国語教師としては、ちょっと言いたいことがあるので、後述しますが、問題はこの「やる」を尊敬語にする場合です。

 

イメージが悪い言葉「やる」

さて、「やる」を尊敬語にする場合、前述の「やられる」とか「おやりになる」と変化させることがあります。文法上は何も問題がないのです。ところがこの「やられる」「おやりになる」は非常に語感が悪いことは、みなさんもお分かりになると思います。
「やられた」は「スリにやられた」「まんまとやられた」「あいつにやられた」のように、「被害を受けた」ことに直結する言葉です。いい意味で「あの人のしぐさにやられた」「あの言葉にやられた」などのようにも使いますが、この使い方も、恋の被害のように「被害」を比喩的に使用しているのです。

「おやりになる」の場合は、とても不自由そうな印象を受けますね。このような場合は、言い換えが最適です。

 

「する」を「やる」とするのをそもそもやめる

実は、私の小学生講座では、「やる」の禁止令をしいています。
「人を使いに遣る」
この使い方以外のものは、絶対にほかの言い方があるはずなので、安易に「やる」と言わず、ほかに言い換えがないか考えてみよう!という指導です。
例えばさきほどの

勉強をやる
野球をやる
休みでもやる。

ですが、

勉強を済ませる、勉強に取り組む、
野球のチームに所属する、野球の練習をする、
休みでも営業する、休みでも仕事をする、

など、実際のケースで言葉は変わるはずです。

最初の例

グランピングをやる
ボルダリングをやる

も、「体験する」などの言葉に直せば、その尊敬語である「体験される」が使えます。

グランピングを体験される
ボルダリングを体験される

「先生、グランピングって体験されたこと、ありますか? 面白いらしいですよ」
「この前、ボルダリングを体験されたっておっしゃっていましたが、どうでしたか?」

さて、言い換えというワンクッション置いた考えかたではなく、もっとパッと使える言葉はないのでしょうか?
はい。きちんとあります。それが「なさる」です。

 

「なさる」の言葉を身に着ける

「なさる」という言葉を日常で使える人は、それがかなりの武器になっていると思います。例えばとっさの時に

どうされました?

と聞いてくる人よりも

どうなさいましたか?

と聞いてくる人の方が、はるかに敬語慣れしている印象が強いです。

「なさる」は「する」の尊敬語です。

なさる

1 「する」「なす」の尊敬語
2 動詞の連用形について、尊敬の意を表す。

広辞苑第6版

つまり

グランピングをやる
ボルダリングをやる

については「なさる」に直すと、直ちに尊敬の意味になります。

グランピングをなさる
ボルダリングをなさる

たとえが一般的なので、あまり敬語という感じがしないかもしれませんが、この「なさる」は何にでも使えます。

勉強をなさる
スポーツをなさる
研究をなさる
講義をなさる

これらも元々は「する」なので言い換えも可能ですが、「なさる」ひとつで済むので、便利です。
簡単で便利で、好感度も高い尊敬語の「なさる」ぜひ活用してみましょう。

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