テレビのテロップで「すごい美味しい」が「すごく美味しい」に修正されるわけ

「すごい」と「すごく」は見た目がとても似ています。同じ言葉からできた言葉なので、意味はほぼ同じです。でも違うということは、違う言葉なのです。「どっちでもいいじゃん」と思っているとしたら、「すごくヤバい」です。

現に、コメンテーターのタレントが「すごい美味しい」と発言した時、テロップがどうなっているか見てみてください。きちんと「すごく美味しい」と修正されているはずです。

 

問題

問題です。次の( )には「すごい」と「すごく」のどちらが入るのが正しいか答えてください。

  1. このお店のチーズタッカルビは、(すごい・すごく)おいしい。
  2. このサイトは、化粧品が(すごい・すごく)安い。
  3. あの人は、仕事が(すごい・すごく)早い!
  4. 今度入ってきたアルバイトの子、(すごい・すごく)かわいいよね。
  5. ティムバートンの新作、 (すごい・すごく)面白いんだって。

答えは全部「すごく」です。1つでも「すごい」と答えたら「すごくヤバい」です。

 

実は国語、みなさんが小学校と中学校で習った「国語」としては、明確なルールがあります。今日はそれを思い出してみましょう。

「えー、普通に『すごい美味しい』とか言うしー。気にならないし!」というあなた。
あなたが、まだ10代で、しかも、これから先もこんな言葉の間違いを許してくれる間柄の友人としか話さないし、さらに『大人になって、仕事の時はちゃんと切り替えられるし!』というなら読み飛ばしてOKです。

 

「すごい」は形容詞

「すごい」は形容詞です。まずはそのことを確認しましょうね。
小さい、赤い、丸い、固い、甘い、酸っぱい、安い……例えば「りんご」を表現するこれらの言葉、すべて形容詞です。
形容詞は「りんご」のように名詞を修飾します。

りんご以外の例

  • 面白い漫画
  • 重たい体
  • 楽しい本

このように名詞を修飾する場合に形容詞は使います。

「すごい」の例

  • すごい人
  • すごい本
  • すごい寒さ
  • すごい力
  • すごい稼ぎ

 

「すごく」は副詞

「すごく」は副詞です。形容詞「すごい」の連用形からできた言葉です。だから意味は同じです。「楽しい」から「楽しく」が出来たルールと同じなんです。「楽しく過ごす」とは言いますが「楽しい過ごす」とは言いませんよね?そう、今日お伝えしたいのは、そのルールなんです。

副詞には、四種類あります。

  1. 状態 主に動詞を修飾し、動作・作用がどんな状態かを表す副詞。「すぐに」「ときどき」など。
  2. 程度 疑問・禁止・感動などの意味を付け加える副詞。「とても」「もっと」「かなり」など。
  3. 叙述(陳述・呼応) 被修飾語の部分に決まった言い方を必要とする副詞。「決して(~ない)」「なぜなら(~だから)」など。
  4. 指示 物事の様子などを指し示す副詞 「こう」「そう」「ああ」「どう」の四語。

そして副詞には、「用言」を修飾するというルールがあります。用言は動詞、形容詞、形容動詞。簡単に言うと、「名詞以外」を修飾するということです。

 

福祉+用言の例

  • すぐに「食べる」
  • ときどき「失敗する」
  • とても「綺麗」
  • もっと「高い」
  • かなり「有名」

「すごく」も同じです。
上の5つの副詞を全部「すごく」に入れ替えても成立するのが分かると思います。

  • すごく「食べる」
  • すごく「失敗する」
  • すごく「綺麗」
  • すごく「高い」
  • すごく「有名」

ね。成立しますよね。

 

「楽しく過ごす」とは言うが「楽しい過ごす」とは言わない

先ほど書いた例文です。
「楽しく過ごす」は「副詞」+「用言」です。
「楽しい過ごす」は「形容詞」+「用言」で、間違いです。
「すごく美味しい」は「副詞」+「用言」なのでOK
「すごい美味しい」は「形容詞」+「用言」なのでNGなのです。

 

そもそも「すごい」が使われる状況が変化

実は「すごい」は長いこと品のない言葉とされてきました。子どもっぽいというか、大げさというか、そんな感じです。フォーマルな場では「すごく美味しいですね」とは言わず「とても美味しいですね」「大変美味しゅうございます」と表現しました。しかし、最近はこのちょっと俗っぽい表現が、逆に本心から出た言葉のように捉えられ、「すごく」がフォーマルな場にも登場するようになってきました。若い人が素直な感想を述べているという見方です。
それくらい庶民的な「すごい」ですから、そもそも使われるシーンが俗っぽかったわけで、そこで言葉のルールを唱えるのはナンセンスでした。でも、今は「すごく」は辞書にも載るようになり、仕事場はもちろん、フォーマルな場でも使われるようになってきたわけです。せめて正しい文法を分かった上で使いたいものです。

 

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