小島慶子さん、更年期を乗り切るコツは?「30代までの競い合いの日々は終わるんです」

国際メノポーズ週間を記念して、薬剤師のカウンセリングに基づく漢方薬サブスク「+kampo(プラス漢方)」と、会話を楽しむオンラインカルチャースクール「classmate」が小島慶子さんをゲストに迎えトークセッションを共催しました。

題して『年齢や体の変化を越えながら幸せに生きる方法とは?― 新たな人生のステージを迎える女性に「学び」と「漢方」ができること』。

前編『小島慶子さんが47歳で直面した「膣クライシス」とその解消法は?「更年期に入る前に婦人科医を探して!」』に続く後編です。

 

更年期は「不調の心配ばかりに脳が支配される」ことがないほうがよさそうです

――いろいろな更年期の情報をご存じの小島さんですが、これまでお聞きになったお話の中で印象深いエピソードはありますか?

はい、更年期については人生の大先輩がたにいろいろと根掘り葉掘り聞きました。そこで知ったのが、全員が更年期障害になるわけではなく、気づいたら閉経してる人もいるということです。

 

例えば、お話を聞いた当時はご高齢でしたが、20代前半にお子さんを産んだ方で、「更年期?どうだったかしら。孫の世話がすごく忙しかったから更年期に集中するひまがなかったわ」という方がいました。不調もあったけれど、孫に手一杯で体調を考える暇がなかったと。働いている娘を助け、孫の幼稚園受験まで面倒を見た。育児書を読んで勉強してとやっていたら、更年期が終わっていたそうです。

 

――50歳前後でお孫さんを育てたということですよね、それは壮絶そうです。勉強というのは?

自分が子育てをしたのは四半世紀前だから、子育てをアップデートしようと思ったのだそうです。いまはこれが常識なのねと、一つ一つ勉強していったと言っていました。

 

「更年期かな、きついなと思いつつも、孫で頭がいっぱいになっていたのがかえってよかったのかも?」と(笑)。その方に、まだうんと小さかった頃の息子たちのベビーシッターをしていただいたのですが、ご高齢でも、とっても頼れる方でした。

 

更年期は10年くらいあるので不調を感じる時期も長いですよね。脳内の全部を更年期の不調で占拠されないよう、関心のあることを勉強してみる、新しいことにチャレンジしてみる、趣味でも学びなおしでも何でも始めてみるのは確かに大事だなって思いました。

 

――なるほど、何か別のことに集中すれば辛さも和らぎそうです。小島さんは趣味や学びなおしはどんなことをなさっているのですか?

オーストラリアで暮らす息子たちが大学と高校に進みましたので、最近では罪悪感を感じることもなく一人旅に出られるようになりました。私、折口信夫の『死者の書』が大好きなので、そこに出てくる奈良の山を見に行ったり、お寺に行ってみたりと、本から入って旅に出かけて

 

気になったことをこまめに調べるのは昔からの習慣で、知らぬ間に雑学の知識が増えているとなんだか嬉しいです。医学や健康に関することも検索しますが、これらは専門家に直接聞くのが一番です。自己判断は禁物。あくまでも「こういう意見もあるんだな」と捉えるにとどめています。

 

更年期のことって自分でもいろいろ調べちゃうけれど、「きっと更年期だな」と思いこんでいて、実は大きな病気を見逃していた、ということもあるそうです。怖いですよね。なので、不安があればすぐに医師に相談するようにしています。

 

50代に入ると「競い合い」が終わり、「労り合い」が始まる。戦いの日々は終わった

――更年期世代の女性が毎日を楽しく、人生を幸福にするにはどんなことを心がけたらいいでしょうか?

50歳になって気づいたのですが、私たちって、自分が生身の身体を持っていることをついつい忘れがちなんですよね。頭の中の情報に振り回されて未来を不安がったり、あの人はこうじゃないかしらとねたんだり。頭の中で考えていることでいっぱいになり、生身の体があることを忘れている時間が長いんです。

 

更年期って、「あなたは生身の体で限られた時間を生きているのよ」と身体が教えてくれているのだと思います。身体を大切にして、頼れる専門家の意見を聞きつつ、自身の変化を緩やかに受け止める。こうしたシンプルなことがだ大事だなって。

 

――力が抜けてくるということはありますよね。ここ数年で劇的に変わったこともありましたか?

年齢を重ねるといろんなものを失うイメージが強いかもしれないですが、いっぽうで得るものも多いんです。経験を重ねていろんなことが前よりよくわかるようになりますし、また、年齢を重ねるごとに競争心も薄まります。

 

 

30代までは人生が変化する時期で、人と比べっこが多かったと思うんです。いくらのマンション買ったの、子どもはどの学校に通ってるのと……。そして自分が周囲に遅れをとっていないかをつい比べてしまう。しんどいんですよね。でも、50歳になると身体も思うようになりませんし、そもそも人生ってそんなに思い通りにならないんだなって気づいて、労り合う気持ちが出てきます。

 

あなたもいろいろあったでしょ、お互いに色々あるよね、よく頑張ってるよねと労り合える。すると人間関係も穏やかに、味わい深くなります。人生は思い通りにはならないけど、思いがけなくいいこともたくさん起きます。これは30代のころには味わえなかった楽しさです。戦いの日々は終わるんです。

 

――30代の頃には確かに、人間関係は「疲れる」ものだったかもしれません。更年期ってそう考えると悪いことばかりじゃないですね。

ね。もちろん、体は変化するから、今も老眼でメモも見えない(笑)。でも年齢を重ねるのはなかなかいいものだなと最近よく思います。昔の人が「無知の知」と言っていますが、ものを知れば知るほど、まだ自分には知らないことがたくさんあることを知るんです。仕事に追われて勉強する時間もなく、絶望することもありますが、いくつになっても知らなかったことが出てきてものの見方が変わり、1年前より賢くなり続けます。それって素晴らしいことだと思うんです。

 

年齢を重ねるにつて、大体のことはわかっちゃった、もう知ってると思いたくなりますが、まだまだこれから知るべきことがあるんだなと思うと前向きな気持ちになれますよね。知の巨人と言われるような人たちがいつまでも若々しいのは、常に新しいものと出会いたいという知識への欲求があるのだと思います。素敵ですよね。私も、年齢を重ねても「知らなかった。もっと知りたい」と素直に言える人でいたいなあと思います。

 

小島慶子
’72年生まれ。エッセイスト、タレント。’14年からオーストラリアと日本の二拠点家族に。自身は日本で暮らし、夫と息子2人のいる豪州と往復。新刊『おっさん社会が生きづらい』(PHP新書)

 

撮影/鈴木愛子

 

 

■+kampo(プラス漢方)
お客様の心とからだの不調によりそい、オンラインでの身近な健康相談相手として信頼関係を築きながら、会話と漢方薬、サプリメントで健康課題をやわらげるお手伝いをします。一人ひとりが健やかにすごせることで、接する人たちに優しくなることができ、お互いを尊重し思いやることのできる社会づくりに貢献します。
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