
更年期のイライラ、40代と50代では「背景がものすごく違う」。「焦燥感」「むくみ」もきっかけ症状のひとつ?
女性ホルモンの変動の影響による「自覚症状」を詳しく分析した研究『10~70代女性のライフステージ別愁訴の変化 ―7万人のデータ解析に基づく横断的検討―』が2024年度の日本女性医学学会学術集会にて価値ある賞、水沼賞を受賞しました。この研究が始まった背景、新しく判明したこと、そしてそれらが私たちの生活にもたらしてくれるメリットについて、研究チームの一人、小林製薬 研究開発本部 医薬品開発部 漢方・生薬開発G 長谷川さんに伺いました。
前編記事『更年期後に「消える症状」と「そのまま残る症状」って?7万人のデータが教えてくれる「更年期の真実と、これからの人生」』に続く後編です。
その「イライラ」の背景に潜むものは?テキストマイニングでわかったことは
前編記事では、「心」と「身体」の症状の出方は年齢で明らかに変化する、という興味深い結果を見出したことをお伝えしました。もうひとつ、全年齢層における症状スコアが最も高かった「イライラ」というキーワードについては、それぞれの世代でイライラという言葉が表す感情やそれを呼び起こす心理機序が異なるだろうと推測して、テキストマイニング分析も行いました。
「グレーは全世代で見られた要素で、赤枠は気持ち、青枠は環境です。20代『些細・人』30代『子ども』40代『些細・不安・家族・子ども』50代『不安』、これらの要素がイライラと同時に強くなるという結果です」
……イライラの成分を解析したという、珍しい研究ですね。個人的に注目したのは、20代から40代まで「人」「家族」など自分以外の要素にイライラしていますが、50代に入れば「不安」とだけ向き合っているように見える点です。これは第二の人生を考える時期とも呼ばれるように、身体不調を感じながらも老後の不安などがあるからではないでしょうか。
「ここまで分析を進めてみて、やはり数年後に感じるであろう症状を事前に知ることができれば症状に気づきやすくなるのではと考えました。従来、症状には『個人差・傾向がありそう』という推測にとどまっていましたが、この研究で症状にはある程度のパターンがあり、また年齢ごとに好発症状があるということがわかりました。さらに研究を進め、今後でる症状の予測や解決手段の拡充もできるようになるのではと期待しています」
これらの研究の一番の苦労点はどこだったのでしょうか?
「多数の要素を含んだ膨大なデータを扱うので、視覚的にわかりやすいアウトプットの形を探すのも苦労しました。解析そのものはすぐにかけられるのですが、クラスタをどういう定義で評価すれば意味が通るか、また現れた数字をどう見ていただくとぱっと見て『なるほど』と通じるのか……」
結果的に年齢による症状推移をうまく捉えることができているのではないか、と長谷川さんは続けます。
「たとえばPMSから更年期へと症状が微妙に移り変わる時期は、年齢で切ってしまうとどのように移っていくのかのきっかけが見えにくくなっていました。しかし、クラスタで評価することで連続的なデータとして捉えることができて、多様な症状と言われる多様さの部分を多様なまま理解することができるようになったのではないかと思います」
今後、たとえばPMSのなかでいずれかの症状を経験した人が更年期にどのクラスタに移行しやすいのか、また更年期の初期と後半ではクラスターは移動したりするのかどうかなどを検討していきたいと考えているそう。ちなみに、現状ある程度の「移動」はあるのでは、と予想しているのだそう。
更年期が「終わると収まる症状」と「終わってもそのまま続く症状」の違いは?
心の症状スコアの年齢による変化
体の症状スコアの年齢による変化
クラスターと併せて、「心の症状スコアの年齢による変化」「体の症状スコアの年齢による変化」もとても興味深いデータですから、ぜひご覧ください。「どの更年期症状を訴えている人に、どんな年齢ピークがあるのか」が視覚化されたデータなのです。
「個別症状については、思った通りのものも、予想外のものも、どちらもありました。更年期の代表的な症状・ホットフラッシュを含む『のぼせ・発汗』は更年期に数字が上がり、閉経後はきれいに下がります。実は『焦燥感』『むくみ』もこれと同じ動きをすることが判明しました。『焦燥感』が更年期の気づきとなる新たな症状ではないかと思うくらいに。これは発見でした」
『冷え』は閉経後は減少しますが、意外なことに、『頭痛』も『冷え』同様に40代でピークを迎え、それ以降は減っていきます。
「『だるさ』も少しずつ減っていくのですが、いっぽうで、全世代を通じてずっと横ばいなのが『腰痛』。そして「不眠」と「食欲不振」は70~74 歳まで増加傾向を示しました。」
こうしてみていくと、女性の身体って更年期ごろがいちばんしんどいのでしょうかね。もちろん、老年期に入れば他のより深刻な疾患もじわじわと増えていきますが。いっぽうで更年期が過ぎても下がらない症状もあります。
「更年期後も続く症状の代表格が『手のこわばり』。同様に『動悸』『めまい・立ちくらみ』もあまり下がりません。いっぽうで不眠は更年期後にどんどん上がってしまいます。食欲不振も同様で、食はどんどん細くなっていきます」
なるほど、更年期が終わると今度は老年期の準備、フレイルや成人病への対策が必要になると言われていますが、こうしてみてみると本当に睡眠の質が下がり、筋肉が減るようなことしか起きませんね。フレイルリスクは現実のものなのだと実感しました。
「しかし、こうしたことがあらかじめわかっていれば、自分に起きる症状も予想することができますよね。私たちは『命の母』という医薬品だけでなく、こうしたデータでも更年期世代の女性の健やかな毎日をサポートし続けたいと考えています。ぜひ研究成果にもご注目ください!」
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