試しに肩を上げてみて?腰の痛みは「〇〇が硬い」せいかも

腰に異常がないのに、腰痛が治らない。

これはプロのアスレティックトレーナーからすると、さほど不思議な話ではありません。

例えば、腰が悪くなくても「足首が硬い」と腰痛になるケースがあります。

なぜなのでしょうか?

今回は、この謎をとく鍵になる「ジョイント・バイ・ジョイント・セオリー」について解説します。

 

人の体は関節の連動で動いている

まず、体の関節がどのように連動して動いているかを簡単に解説します。例えば「歩く」という動作一つとっても、複数の関節や部位がお互いに連動して機能しています。

 

歩行とは、ただ交互に左右の足を前に動かしているだけではありません。細かく分折してみると、腰が体を支え、股関節が滑らかに動き、膝関節や足首の関節が曲がったり伸びたりしながら、各所がバランスよく連動してそれぞれの役割を果たしています。さらに、歩くときには下半身だけでなく、腕を振るといった上半身の動きも伴います。

 

それらのどこか一つが正常に動かなくなると、連動している関節や部位のどこかにも悪影響を及ぼします。

 

試しに、猫背の状態で肩を上げてみてください。その状態では、腕が上までしっかり上がらないはずです。その状態で、肩を上げ下げしたり、捻り動作をしたりすると、「四十肩」や「五十肩」のような状態になる可能性が増します。

 

また、猫背でうまく腕が振れないと、足が前に出にくくなり、前傾姿勢になってしまい、しっかりと足に体重が乗りません。結果、腰に負担がかかり、腰痛の原因となることもあるのです。

 

チェックしてみよう!足首の硬さが腰痛につながる仕組み

皆さんは、つま先を上げ下げするときに、足首がどのくらい動きますか?

足首は、つま先を上げる動作(背屈)では20度くらい、下げる動作(底屈)では45度くらいが正常な可動範囲とされています。

 

試しに足の裏をペタッと床につけたまま、しゃがんでみてください。

しゃがむことができずに、後ろに倒れてしまうのは、足首が硬い証拠です。足首が十分に動かないので、後ろに重心がかかってしまうわけです。皆さんはどうでしたか?

 

では、これが腰痛にどうつながるのでしょうか。

 

足首が硬い人がしゃがもうとすると、後ろに倒れないように踏ん張るために、大腿四頭筋 (太ももの前側の筋肉)を酷使することになります。大腿四頭筋は使いすぎると硬くなり収縮します。

 

そうすると、骨盤の前面と直結している筋肉も縮み、骨盤が前側に引っ張られ前傾します。

 

骨盤が前傾すると反り腰になり、反り腰の人は、体幹部や肩甲骨周囲の筋肉をうまく使えません。その状態で姿勢を直立に維持しようとすると、腰や背中の筋肉に負担をかかり、腰痛の原因になるのです。

 

少々難しいかもしれませんが、大ざっぱな流れはこうです。

 

足首の関節が硬い→大腿四頭筋(大腿直筋)が硬くなる→骨盤が前傾する→反り腰なる→腰痛

 

同じように、胸椎や股関節など、本来あるべき柔軟性を失うと、体の様々な部分でバランスが崩れ、頑張らなくていい部分が異常に頑張らなければならなくなって、腰痛などの痛みが生じてしまうのです。

 

ジョイント・バイ・ジョイント・セオリー

なぜ腰が痛くなるのかを、よりわかりやすく理解するために覚えておいてほしいのが、ジョイント・バイ・ジョイント・セオリーです。ジョイントとは関節、セオリーとは理論という意味で、体の基本的なつくりを説明したものだと考えてください。

 

難しそうに聞こえるかもしれませんが、この理論をごく簡単にまとめると、次のようになります。

 

① 人間の体は、よく動くべき部分(可動性関節)と、安定しているべき部分(安定性

部位)とが交互に連なってできている

 

② よく動くべき部分は動かし、安定している部分は安定させることによって、体は痛

みなく正常に動く

 

・胸椎=よく動くべき部分(可動性部位)

・腰椎=安定しているべき部分(安定性部位)

・股関節=よく動くべき部分(可動性関節)

 

上の図を見ると、腰(腰椎)は本来、安定しているべき部位だとわかります。ゴルフや野球のスイングで「腰を支え」とか「腰を回せ」と言われることがありますが、少し違和感があります。腰は積極的に動かすような部分ではないのです。

 

胸や股関節の動きが鈍いと腰は無理をする

腰のすぐ上と下にある胸椎や股関節がよく動かないと、腰に無理な負担が生じてしまいます。胸椎が動くべき部分まで、腰の可動でカバーしてしまうからです。

 

例えば、上半身を左右にひねるような動きをイメージしてみてください。腰から上をひねって振り向くような動きです。

 

胸椎が柔らかく、よく動くようであれば、難なくひねることができるでしょう。ところが、胸椎が動きにくい場合は、その分だけ腰が無理をして回らないといけません。

 

ジョイント・バイ・ジョイント・セオリーでは、腰は安定していなければいけない部分です。なのに、胸椎が硬いせいで、無理な動きを強いられることになります。その余計な負担が、腰痛の原因となるのです。

 

いくら腰をケアしても腰痛は消えない

さて、人間の体がいかに連動して影響を及ぼしあっているのか、ちょっとだけわかってきました。

体が硬いままでは、いくら対症療法で腰痛をやわらげても、いずれまた腰に余計な負担が蓄積して、痛みがぶり返すばかりです。

 

次回は、腰痛の原因になる体の硬さを解消するための、簡単なストレッチを紹介します。

 

 

 

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