「ステイホーム」は地獄の始まりだった…要介護の父と、うつ病の母。生活保護世帯の男子高校生が経験した「過酷すぎる生活」
学歴なし、職歴なし、資格なし
翌日、父と僕は、パソコンを開いて求人サイトを検索しました。
「もう100件以上確認したけど、できそうな仕事はなかったよ」
僕は検索画面を父に見せました。新型コロナウイルスの影響で、コンビニのアルバイトを探すことさえ大変だった時代です。仕方がありません。
「じゃあ、他のサイトは?」
「他のサイトも結果は一緒だったよ」
溜息を吐いた父は、感情を押し込めるようにして缶ビールを口に運びました。
「そういえば、学歴とか職歴とかってないの?」
「高卒だ。だから書いてもしかたないだろ。それに、働いていたのはもう何年も昔の話だ。いまさら書けることなんて何もない」
申し訳ないことを聞いてしまいました。
「じゃあ、資格はどうなの?」
寝室で休んでいた母が、気怠そうな様子でやって来ました。コロナ休校期間中は両親が口論にならないように、僕は常に配慮していましたが、最悪なところに母が入ってきてしまいました。
「ない。それくらい知っているだろ」
「はぁ……」、父の開き直った様子に、母はわかりやすく不機嫌な顔をしました。
「お前なんだよ、その態度は。馬鹿にしているのか? こっちだって一生懸命仕事を探しているっていうのに」
「馬鹿になんかしてないでしょ? 『現実を見てほしい』って言っているだけなの。学歴もない、職歴もない、資格もない。その状態でどうやって就職するの。身体が元気に動くなら肉体労働はできるのかもしれないけどね、あんたは病気でしょ? 病気の治療と並行して、資格試験の勉強でもしたらどう? 長期的な視点で、経済的に自立する方法を考えるほうがよっぽど合理的でしょ」
「じゃあ、孝弥と佳帆の受験はどうなるんだよ?」
「それは、しょうがないけど、どうにかしてもらうしかないよね」
「いい加減なこと言うな! 受験直前になってから『お金がない』って嘆いたって手遅れなんだからな!」
ドン! 父は、机を思いっきり拳こぶしで叩きました。近くにあったコップは倒れ、パソコンのキーボードは水浸しになりました。
みなさんは、コロナ禍の時期に離婚件数やDVの被害件数などが増加したという話を聞いたことはありますか?
当時は新型コロナウイルスの影響で、家庭内不和が増加しているというニュースがよく流れてきました。外出自粛のストレスや行き先の見えない将来への不安などから、人間関係が破綻するケースがどうやら多かったようです。
家庭内トラブルを抱えていた僕にとって、外出自粛とは監禁生活のようなものでした。どんなに家族との関係性が悪化しても、毎日顔を合わせなければいけない。これは、悪循環を招くばかりだったのです。
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■著者:清野孝弥(セイノ・タカヤ)
現役東大生。2003年生まれ。神奈川県横浜市出身。神奈川県立横浜翠嵐高等学校を経て、東京大学に現役合格。東京大学法学部を最優秀成績で卒業し、現在は東京大学法科大学院に在学中。ある警察官との出会いをきっかけに、「逆境に置かれている子どもたちに希望を届けたい」と考え、生活保護世帯のヤングケアラーとして育った経験を本書に記した。
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