不調を自覚し「自分に必要なコスメ」を作った開発者。40代に大切なことって?【100人の更年期#16】

一般に、閉経の前後5年を更年期と呼びます。日本人の閉経の平均年齢は50歳なので、45-55歳の世代は更年期に当たる人が多いもの。身体の不調に苦しみ「更年期障害」の状態に至る人もいます。

オトナサローネは同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材しています。

今回は、自分の不調をベースに、「自分に必要な美容アイテムを自分で作った」というメーカー開発者のお話です。

(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)

【100人の更年期 #16】

 

モイスト パウダー イン オイル 60ml 4,800円+税/ニッピコラーゲン化粧品

お話/(株)ニッピコラーゲン化粧品 商品部 森下知香さん

昭和46年生まれ。大学卒業後、(株)ニッピコラーゲン化粧品に入社。基礎研究を経て、開発部門で数々のプロジェクトを歴任。

一番最初に気づいた症状は自分の「怒りやすさ」

–大学では理系学部を卒業、(株)ニッピコラーゲンに就職して以来、コラーゲン製品の開発ひとすじという森下さん。昭和46年生まれの48歳、更年期世代だ。

 

2017年に「コラーゲンパウダーを使ったオイル」という開発ミッションが下りました。当時46歳、「なんとなく不調」でもまさか更年期だとは思っていなかった。なので、自分の変化にとまどって、何だろうと混乱して、悩みました。いろいろな症状をネットで見た結果、「きたな」って気づきました。

 

私に最初に起きた変化は、「怒りやすくなった」こと。些細なことでイライラするんです。たとえば、電車で前の人が急に立ち止まったらカチンときたり。ある日ふと我にかえり、「私ってこんなに心の狭い人間だったかな……?」と驚きました。

 

ちょうどその頃、帰宅してもだるくてだるくて。よっこいしょとソファに座り込んだきり動けなくなってしまったのです。そういえば母もそうだった。

 

眠りももともと浅いのですが、さらに浅くなり、ちょこちょこ目が覚めて、熟眠感も激減。また、月経サイクルもちょっと短くなったりし始めました。

 

職場の同僚は自分より若い人が多く、同年代の友人ともわざわざ更年期の話はしなかったので、同世代はどうなのか情報が入ってきませんでした。でも、調べると自分にあてはまる部分が多い。

 

ああ、これが更年期なんだなと。今までと違う自分が見え隠れしました。

 

ちょうどそのタイミングで「モイスト パウダー イン オイル」の開発プロジェクトが始まったんです。

 

絶好のタイミングで新製品ミッションをスタート

まずは、弊社独自の原料である「生コラーゲンパウダー」を生かすにはどうするかを考え、オイルに配合することにしました。全身に使用することができるオイルです。

 

そして次に考えたのが香りでした。40代以上の女性に使ってもらいたい商品。

 

同年代の自分がこういう状態ですから、女性特有の不調にアプローチできる精油を使った、やわらかでほっと癒やされる香りがいい……と思いました。例えばローズのほか、フランキンセンス、ネロリ、サンダルウッド。

 

であれば、社のこだわりと、私の香りに対するこだわり、両方を生かしたいと思うようになりたいと思いました。

 

「香りを作り出す」ことの驚きと意外さ

 

私は精油が好きで、検定資格も取りました。が、商用に香りをブレンドするのはまた違う技術。なので、私が考える香りのイメージを形にするため、過去にお世話になった調香師さんに依頼をしました。

 

これまで香りは専門外でしたので、香りのイメージをどう伝えたらよいか悩みました。精油の効果も含めたかったので余計に。そこで「使ってもらいたい人のイメージ」「使うシーン」「その香りに包まれてどうなってほしいか」など思いを伝えることにしました。

 

その時伝えた内容は…

 

「更年期を迎えてとまどっていて、心の奥にずーんと疲れがたまっている。ケアをしなければと思っているけれど、なかなか時間がとれない女性に使ってもらえるオイルを」

「お風呂やシャワーですっきりしたあとに」

「エレガントな香り。作られた香りではなく、本物の香りに思わずほっと吐息が漏れる香りにしたい」

「お風呂上がりをリラックス、プチ贅沢タイムにしたい」

 

さらに、「トップノートをバラの香りにしたい」「爽やか、華やか、上品というノート変遷をしたい」とオーダーしていました。

 

後日3つほどのサンプルが出てきましたが、最初に嗅いだときのことは忘れられません。私の言葉、こんな香りになるんだ…と、感動しました。

 

どれもいい香りでしたが、あまりローズを強調しすぎないほうがいいな、軽すぎても華やかすぎても年齢にそぐわないな、など意外な発見がありました。

 

バランスがよい香りは逆に「何の香り」と言葉にできない

――こうして慎重に1つの香りを選び、さらに微調整をしてもらう。だが、最後にできあがった香りは「ひとことでは説明できなかった」という。

 

フローラルでもハーバルでもなく、ローズが強いわけでもなく……というとネガティブに聞こえますが、逆。

 

このように、精油のバランスが取れていると、その香りはひとことで言えないと知りました。私が想像していた香りの、さらに上を行く香りでした。大成功。

 

いろいろな人に嗅いでもらいましたが、全員反応が違います。人の脳は自分の好きな香りから嗅ぎ取っていくのですね、「私が好きなサンダルウッドの香りがして」「ティーツリーの爽やかな香りがして」「オレンジのみずみずしい香りがして」と人によってまったく反応が違うんです。

 

–取材の場にいる3人だけでも「バラとオレンジを感じる」「ウッディなサンダルウッドの香り」「オレンジとゼラニウム」と感想が別れる。

 

でしょう?でも、この製品、店舗での販売がないので、サンプルを嗅いでもらえないんです(笑)。

 

カタログでは香調を説明しないとなりません。どうしよう??と調香師さんと悩みました。最後にサンダルウッドとイランイランの落ち着いた香りが残るので、「エレガントウッディ」というネーミングにしました。天然の精油だけでここまでバランスのいい香調を作り出せるのだと感動しました。

 

もともと「香り」が大好き、密かに憧れていた世界

大学では微生物を研究していた私ですが、実は就職活動のときは調香の世界も考えたくらいに昔から香りのことが好き。就職したのは無香料のニッピコラーゲン化粧品でしたが、ずっとこうして化粧品に携わってきたことで、この年齢になってめぐりめぐって自分の原点に立ち戻る機会に恵まれました。

 

いちばん最初にプチサンボンにはまり、ハッピー、ウルトラマリン、DUNEなど、私たちの世代を代表する香りたちを楽しんできました。初ボーナスが出たときはドキドキしながら百貨店に行って、ニナリッチのNINAを買い、これが似合う大人の女性になりたい、と思っていました。大事に大事に、大切なイベントのときにだけ使っています(笑)。

 

香りは、自分の個性をあらわす1つの要素だと思います。でも、この商品の香りは、自分のため、自分を癒やすための香りとして追求しました。

 

なので、自分の嗅覚にさえ香りが届ければいい。長時間持続しなくていいと思っています。塗ってしばらくは香るけれど、ベッドに入って起きたらもう気にならない。日中、香りをつけたくない方や、好みの香水をつけたい方でも、気兼ねなく使えます。

 

自分の思いを受け入れてくれる人がいる喜び

――45歳を過ぎたころから、未来のことをあれこれ想像するより、過去を思い出して、「あのときこうすればよかった」と考えるようになった。

私の人生にも折り返しがきたのかもしれません。好奇心はあっても20代のころのように手放しであれもこれも挑戦したいとは思えなくなり、もっと具体的にそろばんをはじくようになりました。これをしてみたい、だったらこういう資格がいるな、勉強時間は何時間必要だな、と好奇心にブレーキをかけてしまっています。

 

そんな私が今回、こだわりを形にした製品に挑みたいと思えたのは、2009年に作った石鹸のおかげ。私は石鹸洗顔のきゅっと洗いあがるのが好きなので、自分のこだわりを盛り込んだ透明石鹸を作ったのです。泡立ちのスピード、泡のきめや持ち、硬さ、すべてを細かくコントロールしてもらって作り上げた自慢の一品です。

 

この石鹸がとても好評で、4,000円近い高価な製品ですが、ずっとリピーターさんに愛されています。マーケティング上必要な要素ではなく、自分のこだわりを元に製品を作ってみたら、それが歓迎された。「自分の好みを受け入れてくれる人がいるんだ」とうれしくなりました。

 

 

オイルそのものにも自分のこだわりと詰め込んでいる

――オイル部分にもこだわりがある。1年通じて毎日使うために必要なのは、使用感の軽さ。

 

当初は軽さを追求してホホバオイルをメインにと思ったのですが、ホホバオイルは冷蔵庫に入れると結晶化します。弊社は生コラーゲンの配送にクール便を使うため、断念。スクワランに切り替えました。

 

でも、私がどうしてもホホバオイルを使いたくて。きっと結晶化しない配合があるはずだと来る日も来る日も、冷蔵庫でも結晶化しないホホバオイルとスクワランオイルの配合比率を試し、結果的に「これなら大丈夫」という配合を自力で見つけ出しました。

 

アンズ核油も私のこだわり。個人的な話ですが、私はちょっと摩擦があると首のまわりにぷつぷつができやすい体質で、悩んでいます。自分がそうなので、電車の中で他の女性の首元に目がいきますが、意外にできている人が多い。

 

なので、ぷつぷつにアプローチできるようにという願いでビタミン類を含むアンズ核油を配合しています。なめらかに肌になじむアボカド油も配合。これら4つのオイルのほか、生コラーゲンパウダー、精油、これだけのとてもシンプルな製品です。マーケティング上必要な要素を入れたのではなく、「私が納得し、私の世代が必要とするもの」を盛り込んで完成させました。

 

個人的なおすすめの使い方は、お風呂上がりに全身に塗ること。肌に少し水分が残った状態がベストです。なぜかというと、乾燥時にはバネが縮んだような状態のコラーゲンが、水分に触れると伸びるように肌に広がっていくから。肌の上をコラーゲンのベールで包んでくれます。顔、髪、ネイル、何でも活躍します。

 

50代を迎えるには「いい香り」が必要になっていく

――今回の開発を通じて、わかったことがある。「人はいい香りに包まれると表情がほころぶ」ということだ。

 

どんな人でも、いい香り、好きな香りを嗅ぐと眉間のしわがほぐれるんです。こういう、「ほぐれる時間」が女性には絶対必要だなって感じています。

 

弊社のお客様は50代以上が中心です。自分がその世代に入ったことで、お客様の悩みと自分の悩みが近くなってきたように感じます。つまり、自分の悩みに向き合った商品を考えれば、お客様の悩みに応えることができるのではないかと思っています。

 

この絶好のタイミングで、開発の機会に巡り合えて、本当に私は幸せ者だなと思います。

 

 

【100人の更年期】隔週日曜20時連載です。

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■メインの症状別、みんなの話■

■メインの症状別、みんなの話■

「言いようのない寂寥感」 48歳

「ホットフラッシュ」 48歳 51歳

「太った」 54歳

「生理不順」 45歳

「だるい」48歳

「貧血」51歳 47歳

「めまい」 44歳

「突発性難聴」 47歳

「子宮頸がん」 46歳

「甲状腺の病気」 47歳

「鬱」 54歳

「プレ更年期」 45歳

「更年期が過ぎたあと」 59歳

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