【近藤サト】冬に届いた単衣の着物が教えてくれたこと|女のギアチェンジVol.7 

一見季節外れの着物を送ってきた老舗の着物屋さんの本心とは

京都から、美しい水色の着物が仕立て上がって届いたので、うきうきしながらたとう紙を開いて着物を広げると、あらっ?単衣になってる?!京都のきもの屋さんは、届いたらすぐ着てくださいね、と言っていたのに、仕立てが春秋仕様の単衣(ひとえ)だったのです。今は冬まっただ中。単衣にしてくださいと私から頼んだのかしらん?と思いつつ、とりあえずきもの屋さんにお礼メールをしがてら「春になったら着ますね」とお伝えしました。

 

すると間髪を入れず京都から電話が!「サトさん!袷(あわせ)がいつとか、単衣がいつとか、気にしなくていいんですよ。そら、もちろん、いろいろ言ううるさい人はいはりますよ。でも、決まりを分かってて、あえて着るならいいんです。しかも、テレビのスタジオは暑いでしょ?芸能人は冬でもノースリーブでしょ?なのに着物だけ堅苦しい決まり事を守らんといかんことはないでしょう!」

 

京都の、老舗の、きものを知り尽くした重鎮が一気呵成にまくしたてたのです。そもそも今回のきものは、重厚な織りの生地だったため、着た時の生地の落ち具合とか見た目の印象とかを考えて、単衣仕立てにしたほうが野暮ったくなく一番美しいと思ったからだと、専門的な理由も教えてくれましたが、「老舗」こそが伝統と格式を重んじ、消えゆく文化を守りぬくために厳しく目を光らせていると思っていた私は正直驚きました。

 

窮屈な決まりごとから自分を解き放つことで、着物文化は続いてゆく

 

でもよく考えてみると、きもの文化が衰退していると言われて久しいにもかかわらず、きものは歴史上、最も窮屈な決まりごとの中に押し込まれています。着る人はおろか、作り手も少なくなっているのに、時代遅れの窮屈な伝統やしきたりにうるさく、高価な「ハレ」のきもの(振袖や普段着と言われている紬も今では高級きもの)が残り、「ケ」(木綿やウールなど)の日常的なきものは絶滅危機です。

 

しかも、いざ着るとなると美容院や着付けにお金も時間もかかり、自分で着たい人は、身近に教えてくれる人がいないから、着付け教室に行くしかない。

その着付け教室で細かな決まり事やしきたりのようなものを学びます。実際、教えられた通りに着ると、完璧な印象は受けますがなんというか装着感が先に立ち、その人らしさや遊びが見えず、結果的に着物は目立つけれど本人が沈んでしまうという本末転倒の見た目になってしまいます。それを乗り越えるには着る回数を重ねて行くことしかありません。

 

きものはファッションなのです。その人が好きだと思うきものを自由に楽しく着ることから面白さが始まるといってもいいかもしれません。

ただし一度きちっと学んでおくことも大切です。私は独身時代に、あるきもの教室のモニタ―生に応募して、格安で半年着かたを習い、その後は全て独学です。着るきものも、お金が無いころはおさがりや古着市にもよく行きました。いまはネットでずいぶん安く買えますよ。その破格の安さは、もともとの買取額がずいぶん安かったのだろうと想像できますが。高い着物を買う前に古着や格安きものをお勧めします。

 

きものにうるさい人が、「おはしょりが長いわよ」「紬は普段着よ」「単衣を冬に着るなんて」「柄が合ってない」と言い、きものを着ない人が「きものってお金がかかる」「現代の生活様式に不都合」「めんどくさいし疲れる」と言う度に、どこかで綺麗なきものがひっそり死にます。

 

京都のきもの屋さんにはそれがはっきり見えているのです。私もあやうくきもののクビをしめるところでした。自分は大丈夫と思っているきもの女子のみなさんは特に要注意ですよ。

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