ムダになる挫折なんてこの世にひとつもない。何歳からだって人生は好転する

2022.10.28 WORK

しなやかでスキニーなスタイルは一目瞭然。ダンスで鍛えられた筋肉が美しく芸術品のようなAikoさん、42歳。バレエとポールダンスのインストラクターとして、スタジオで教えるいっぽう、アパレル商社でPRとしても勤務する大人の女性。そして家へ帰れば小学生のママという3つの顔を持つ。

ポールダンスに魅せられたきっかけ、ママとなってもダンスを続け、ファッションの仕事と両立させているライフスタイルについて語ってもらった。

前編『バレエに挫折した少女がポールダンスで「世界をとる」意気込みを取り戻す紆余曲折』に続く後編です。

【新しすぎる働き方図鑑#3】後編

あまりにもポールダンスが生活の中心になりすぎて、仕事に影響が出始める

その後はすっかりポールダンスが中心の生活になっていたため、Aikoさんの本業の仕事にも影響が出てきた。

 

「ポールダンスをはじめてちょうど5年が経ったころ、チームメイトのひとりがアタッシュドプレスのPR会社に転職したことがご縁で、私もその会社に転職することになったんです。未経験の仕事で不安もありましたが、ポールダンスの仲間と一緒にがんばることにしました」

 

ダンス仲間と本業の仕事も一緒になったことが思わぬ好機となり、ファッションの編集者やファッションブランドの関係者を通じて、ポールダンスの噂が広まっていく。

 

「ブランドのレセプションパーティで私たちのポールダンスを披露したら、さすがに斬新でした(笑)。でもその後いろんなブランドのパーティで呼んでいただいて、仕事の延長で披露する機会が増えていったので、自然に仕事とポールダンスがつながるようになったんですね。ファッション業界にいたからできたことです。とっても充実していた時期でしたね」

 

その後、仕事とポールダンスの両立で順風満帆のまま32歳で結婚。しかし気になっていたのが生理不順だった。

 

「将来の出産を考えて、婦人科に通い始めたんです。その結果、自然に妊娠するのが難しいとわかり不妊治療を開始しました。でも私は仕事を続けながら、ポールダンスの練習もして、深夜のイベントにも参加していました。不規則な生活は変わらなかったんです。治療には夫の協力も必要なので、子供が欲しいならまずは私自身の生活を整えていかないと、と考えるようになりました」

 

しかし、生活を改めてみるもののなかなか授からない日々が続く。いよいよ体外受精を考えるようになり、いったん不妊治療をすべてやめようとしたタイミングで妊娠がわかった。

 

不妊治療からの出産。身体への向き合い方が変わった実感がある

35歳で女の子を無事出産。その後はしばらくポールダンスは休業。そして子育てをしながら仕事に復帰しつつ、自分の体と向き合うヨガやピラティスをはじめるように。

 

ところで、出産したとは思えないAikoさんのどこからでも魅せるボディライン。まったく無駄がなく、線で描いたように長い脚がまっすぐ伸びて美しい。日頃のルーティンやケアについて聞いてみた。

 

「定期的に全裸を鏡でチェックすることはありますが。本当に太らない体質なので、両親に感謝なんですよ(笑)。ただ年齢を重ねてきたので、健康という意味で食べるものをきちんと選ぶようになってきました。不妊治療をしたときに、自分の体は食べたもので成り立っているとつくづく感じたので」

その後、母となったあともダンスのことが頭から離れないAikoさん。小学生になった娘さんにはバレエを習わせている。姿勢もよくなるし、規律も厳しいですからよいしつけになるという。娘さんと一緒に踊る日も遠くはなさそうだ。

 

ポールダンスのチーム仲間の方は、皆、本業に専念する年齢になったこともあり、それぞれの道に。いっぽうでポールダンスの業界そのものはメジャーになって、次世代につなげるような動きが増えていった。

 

「ポールダンス業界の第一人者に友人がいて、彼が自分のスタジオをオープンすることになったんです。彼曰く、ポールダンスの先生自体はたくさんいるけど、バレエも踊れるダンサーは少ない。ポールの基礎としてバレエのレッスンは必須だからとオファーをいただきました」

 

新しく作った「ポールバレエ」のクラス。常識に囚われず本質を見極める

「スタジオでは、私のベースのバレエを活かして、“ポールバレエ”というクラスを作ったんです。ポールダンスって、演歌やポップス、洋楽、どんな音楽でも踊れるし、色んな形にすることができます。例えば踊るスタイルだって、裸足でもいいし、ヒール履いてもいし、スニーカーでもいい。でも私が求めるのは手先や足先まで意識された優雅な美しいダンス。だから私のクラスは、エレガントで、美しいダンスを目指すことをコンセプトにして、親しみやすいように初心者の方でも踊れるようなプログラムにしました」

 

現在のAikoさんの生徒さんは、20代から50代の方々。幅広い世代が通っているという。2021年からインストラクターとして教える側に転じ、再出発した。仕事の方はといえば、働きやすい形を選択することに。

 

「ポールバレエと仕事と子育てを両立していく働き方を考えた時に、いまはフルタイムの正社員だと難しいので、ファッションブランドのPRのお仕事は業務委託という形で働いています」

 

ファッションの仕事とポールダンスの先生、そして子育ても。いま現在のAikoさんの立場と環境で、自分自身のライフを振り返ってもらった。ゆらぎがなく颯爽と見えるAikoさんだが、意外にも謙虚な言葉が返ってきた。

 

「独身の時から続けてきたスタイルを崩さずにやってきましたが、自分のことばっかりやってるんじゃないかって不安に思うことがあります。夜、会食で出かけたり、ポールダンスのイベントもあって他のママに比べてやってることが多いので。最近は、子どもが大きくなって、私が留守なのがわかるので、正直いうと“大丈夫かな?”と悩むことがあります」

 

不安がよぎることがあったとしても、長く携わってきたファッションの仕事では、新しいことにチャレンジしたい。ポールバレエを教えることも続けたい。この先どちらも両立してやっていきたい。

 

「自分のやりたいことを諦めずにやっていくのが私流なんです。でもそれは家族の協力があってこそ出来るので、いまは感謝の気持ちでいっぱいですね。私の姿を見ている子どもが、“お母さんいいな、カッコいいな”って思ってくれるのが、一番いいのかなって思っています」

 

幼少のころから続けてきたダンスを通じて、本物の美しさを捉える力を培ってきた。自分の気持ちに素直に従った結果、美しいものをどこまでも追い求めることになり、貪欲に掴んできた。忘れなかったのは支えてくれる人たちへの感謝の気持ち。素直に感謝する気持ちと一緒に自身の体験や感動、達成感も分かち合ってきたのはAikoさんの愛情表現だ。それこそAikoさん流なのかもしれない。

Aikoさんの働くスタジオ
POWER SPOT AOYAMA TOKYO

 

▶【この記事の前編】バレエに挫折した少女がポールダンスで「世界をとる」意気込みを取り戻す紆余曲折

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