
超高齢社会の日本だけが世界で成功する「若返り」って?抗老化医学の先端を走る医師が語る「エピジェネティック」
「いま更年期の世代の人たちの10人に1人が100歳まで生き、子どもの世代は5人に1人が100歳を迎えます」。こう聞いて、どう感じますか?
53歳の私が周囲の友人らに話すと、男女で態度が分かれます。男性は「……?(ピンとこない)」。女性は「うそでしょ?」「絶対いや」「困る~」などの大反対。
「しかし、生きたい、生きたくないに関わらず、現実にあなたがたはもっと長生きするんです」、こう語るのは、近畿大学アンチエイジングセンター 教授の山田秀和先生。日本抗加齢医学会 理事長を務める山田先生は、「見た目」の研究から、遺伝子の働きを制御するエピジェネティクスの仕組みの究明にも注力。日本における「若返りと抗老化」の先端研究者のおひとりです。
でも先生、私たち、不安なんです。長生きをしても、あまり幸福ではなさそうだという予感がして。
生きたくないといっても、現実に「長生きしてしまう」可能性のほうが高い
「しかし、40代50代のみなさんのお母様やお祖母様は、いま80歳90歳を越えてもお元気ですよね。あと50年以上の長生きはイヤなのかもしれないけど、現実にそれは自分の身に起きるのだと思っていてほしい。僕たち医療サイドがどうこうするのではなく、生活レベルが向上した結果、現時点ですでにみんな長生きしています。そして、認知症や痛みなどに苦しんでる場合もある。では、あなたはもっと長くなる未来に備えてどうするんですか? そういう時代なんです」
人類が初めて迎える前例のない長寿ですから、「予想以上に長生きするよ」ということすら誰が教えてくれるわけでもなく、いざというときまで準備もできないのが現状です。そのため、科学的にわかっていることをしっかりと伝え、できる限りよい選択と準備のため提言することが自分たちの役割だ、と山田先生は言います。
「女性はこういう話を聞くと自分で工夫するからいいのですが、男性はもともと宵越しの金を持てないような性質を持っています。健康面だけではなくハピネス、ウェルビーイングまでを含んで、金銭のことも考えたうえでの健康長寿。僕たちは『エンドポイント』という言い方をしますが、自分の人生をここまでにしようと定める、その終止符はご夫婦なり家族なり、関わる人すべての生きざままでを含めた話になるのです」
もはや医学と健康の話の枠にとどまらず、そこには年金制度、墓じまい、家の維持など、さまざまな社会的事象が関与してくると山田先生。
「どうしても、膨大な行動変容が必要になるのです。百寿という事象の前では生活に関連するすべてが『健康』というキーワードに関与してきます。墓じまいをどうするのという話の向こうには『そんな長生きは嫌だ』と直感的に感じている皆さんの姿もある。でも、『膝が痛くて階段が上れない叔母がかわいそうで』から一歩進んで、『いまはエクソソームを注射するんだよ』と対抗知識を深めながら進んでいくこともできる。物価も金利も上がる、だから現金で持たずに資産運用をしないとねというのとまったく同じ話なんです」
若返りとは「老化速度を遅くする」ことでも実現できる。それは、できそうですよね?
これらを受け入れるとしたら、もう一つ大切なのがどう後ろ側へエンドポイントを動かすか。それが「老化速度を遅くする」ということなのだと続けます。
「認知症、脳卒中、がん、僕らが恐れる病のほとんどは『老化疾患』です。。30歳以前の病気には遺伝的な要素もありますが、それ以降はそれまでの蓄積が関係します。同窓会に行くと、同じ50歳でもすごく若く見える人と、すでに老人になっている人がいますよね。それをよくよく調べてみたら、家系的に長生きや元気な人もいるけれど、後天的な影響、つまり『エピジェネティクス』に影響を受けていそうだなというのがわかってきました。『エピジェネティクス』は『生物学的年齢』という言葉に置き換えることもできます。遺伝子が同じ一卵性双生児であっても、40、50、60歳と年を重ねると環境因子の影響を受けて老化速度に差が出てくるのです」
例えばですが、紫外線、運動不足、暴飲暴食、睡眠時間が少ない、大きなストレスがかかった、などの人は老けて見え、また老けて見える人は血液検査の結果でも年を取った数値が出るのだそう。双子であっても同じ結果になるため、後天的な因子で加齢が起きてるとわかるのだそうです。ここまでが、この3年ほどで急激に進歩した「若返り研究」の概要です。
「2021年ごろ、ネズミの研究で、加齢を止めるだけでなく、実際に若返りを起こすことも可能だということがわかってきました。ヒトに応用するにはまだ10年から30年かかりますが、少なくとも運動・栄養・精神的な影響までは判明しているので、老化を遅くすることはできそうです」
山田先生は、月面探査コンテストなどで知られるXプライズ財団(リンク)の「10年若返らせることができたら賞金1億ドル(150億円超)」という国際コンペに日本からのチームを送り出す活動もしています。このコンペでは筋肉・認知・老化の3つの老化速度を2030年までに10年遅らせることがゴールです。
「60歳からスタート、20年後の80歳のとき、生物学的年齢が70歳ならば老化速度が半分に抑えられ、10歳若くなっていると解釈できます。この競争が始まったため、科学者・医学者が一斉に『生物学的年齢で世界を捉える考え方もありだな』とスタンダードを変えたのがこの3年です。生まれてから何日経過したかの『暦年齢』を見ずにその人の年齢を算出しましょうというのが『エピジェネティック・クロック』、つまり『生物学的年齢』の考え方。これには『DNAのメチル化』というキーワードが深く関与しています」
ここまでの前編記事では「生物学的年齢」という尺度が必要になる理由を伺いました。つづく後編記事では「その尺度を使うと日本がとたんに宝の山になる」理由をお聞かせいただきます。
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