
看護師僧侶の玉置妙憂さんに聞く 誰の人生にも訪れる「死」の話
わが子のアトピーをきっかけに看護師になり、夫を看取ったのちに僧侶となった玉置妙憂さんは、その両方のまなざしで、死を前にした人に寄り添うスピリチュアルケア師です。
波乱に満ちたこれまでの日々で培われた死生観についてじっくりお聞きしました。
誰の人生にも「死」は確実にあります。
でも、普段は見ないように蓋をして今日を生きられるんです…
「私たちの誰もが、人生のゴールには『死』があると知っています。でも現代社会の中で、死は見なくていいように蓋をされているんです。毎朝、『今日死ぬかもしれない』なんて考えて生きることはできませんが、死を前にしてもなお、『まさか自分が死ぬなんて』と衝撃を受けている人が多いのです」
高齢なら死を受容できるのかといえば、実はそうではない。
「現在70代後半から80代の人は、死の受容力が最も弱い世代ではないでしょうか。高度成長期に物質的な豊かさを求めて働き続け、常に前向きに努力してきた世代です。医療への信頼も厚いので、死について考えることを拒絶するのです」
そういう人ほど、もっといい医師がいるのではないか、もっといい治療法があるのではないか、と探し続けてしまう。
「悪いことではありませんが、『もっといい方法があるはず』と思っているうちは、どんな治療も満足できませんし、死を受け入れる準備もできません」
3・11とコロナ禍で
日本人の死生観は変わる
誰だって死は怖いし、老いはつらい。それは妙憂さんも同じだという。
「私も後半生の世代に入り、明らかに残りの人生のほうが短くなりました。ましてや私の両親は、残された時間はもっともっと短い。彼らの気持ちを思うと、夜中にうわーって叫びたくなることもあります」
そんな自分の弱さは弱さとして受け止める。恐怖は恐怖として受け止める。
「死は理不尽ですし、不条理です。『死ぬのは仕方がない、いい人生だった』と納得しようとする自分と、『死にたくない』と思う自分の間で、バタンバタンしてしまうのは当然のこと。でもどこかで死を受け入れ、答えを見つけるしかないのです。軸を自分の中につくることで、死というゴールにたどり着くまでの人生を、豊かに生きることができるのだと思います。その姿を次の世代に見せることが、人としての最後の仕事ではないでしょうか」
撮影/中村 太
死から目を背けがちな日本人も、最近は少し変わってきていると妙憂さんは感じている。きっかけは東日本大震災だ。
「あのとき、日本人はあまりにも多くの『死』を目の当たりにしました。今回のコロナ禍もそう。見ないようにしていたものが、見えてしまった。日本人はこれから、確実に変わると思います」
特に変化を感じるのは20代や30代の若い世代だという。
「彼らはゲームやマンガ、アニメや歌などを通じて、死を見据えることが自然にできている世代です。出世するとか金持ちになるとかではなく、日々をどう気持ちよく自分らしく生きていくかを大事にしています。私も、人間は本来そういうものではないかと思います。それは仏教の教えとも通じるものです。私たちはもうそろそろ、彼らに時代をゆずり、彼らが生きやすい社会にする手助けをする番ではないでしょうか」
発売中の『ゆうゆう』2020年8月号(こちら)では、玉置さんの波乱万丈な人生や壮絶な修行のことまで、幅広い内容のインタビューが掲載されております。是非チェックしてみて下さい!
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【プロフィール】
たまおき・みょうゆう●東京都出身。専修大学法学部卒業後、法律事務所勤務を経て、看護学校入学。現場で働きながら看護大学から大学院へ進学、看護教員として指導も行う。夫を看取ったのちは高野山真言宗にて修行を積み、僧侶に。現在は非営利一般社団法人「大慈学苑」を立ち上げ、スピリチュアルケアの活動を続ける。著書に『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)など。メルマガも配信中!配信お申し込みはこちらから。
撮影/中村 太 取材・文/神 素子
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