「私が黙っていれば済む」社会は調和からはほど遠い。セレブが指名するブランドオーナーの気づきは【CHICO SHIGETA】
世界の著名人から指名され、世界的なブランドを築いてきたCHICOさんの素直で自然なスタイルゆえのつまづき、自分とSHIGETA PARISとの向き合いかたを通じて、同じ世代の女性に伝えたいことを伺った。
自分のブランドを2分で語ることができないという30代最初の壁
いろんなチャンス、人に恵まれて、2006年にSHIGETAを起業して走り出しました。
駆け出しだった30代の頃のことです。ブランドを立ち上げて日々一生懸命仕事をしているのですが、自分のやっていることを、2分で説明できないという衝撃の事実が発覚したんです。
ある時、起業家の仲間たちの間で話すことがあり、私は自分の会社とブランドについて一生懸命説明しているのに、まったく伝わらない。
伝えたいことを要約して、わかりやすく伝える訓練を開始するが……
日本人特有のマインドもハンデになり、謙遜しすぎてしまう傾向がありました。私のブランドなのに「つまらないものですが…」というのは全くおかしいですよね。
実家が美容室だったので、お客様を立てるのが当たり前という環境がありました。お客様が「上」で、店側は「下」という流れや気持ちが無意識に醸成されていたことが、「伝えること」にとっては仇になってしまって。それに話を脚色しようとするので、結果的に話がバラバラになってしまうこともありました。
SHIGETAに対して心の込め方が誠実だからこそ、あるがままを話せば、相手に伝わるものであるはず
そこでまずは話し方のコーチを付けて、話す訓練をしました。あるがままを伝える練習です。ノンバーバルなコミュニケーションで、テクニックではなく、謙遜でもなく、誇張でもなくそのままのことを誠実に伝える訓練をはじめました。その時学んだ話し方のコツによって、今では自然のまま話せるようになりました。
超ベンチャーだけど、世界的な化粧品ブランドづくりのプロとの出会いも
フランスは失業率が高い国ですから、科学技術の研究分野で雇用を増やす目的であれば、国からのさまざまな援助があります。その援助のひとつがスペシャリストの派遣なんです。その制度を利用して、自分たちでは縁がなく探すこともできない、世界的大ブランドの元ディレクターたちと出会うことができたのです。そんな優秀な人たちにラボ作りから製品の開発までアドバイスしていただくことができたのは本当にラッキーだったと思います。
例えば、研究の過程でフォーミュラが出来上がります。ところがビーカーのサイズから100キロ分を製造するとなると、同様に製造するのは難しいことが多いんですね。製造過程に入ると、熱量や圧力などパワーが全然ちがうためにビーカーでの製造時と状態が変わってしまうのです。
自分たちは熟練者ではないけれど、いいものを作りたいといつも願っていた
2010年にラボを設立したのですが、私とスタッフの2人でしたので、高額な設備投資はできませんでした。商品の劣化を検証するためのマシンにワインセラーを利用したり、低温のオーブンを使ったりして、工夫しながらのスタートでした。
最初は製品開発のための研究だけで、製造はアウトソースの予定でした。ところが製造を外注すると、使ってほしい原料を使ってもらえないことあるとわかったのです。
例えば、使ってほしいオイルを指示しても、在庫の別のものを使われたりして。そんな部分にフラストレーションが溜まっていくようになって。
それならば、自分たちで製造までやって、失敗しながらでも、やり直しを繰り返していくストレスの方がいいと判断し、製造までSHIGETAで担うことになりました。
とことん自分たちで作っていく。研究だけではなく製造も手掛けることに
製造までやるとなれば、製造機械の導入が必要です。ところが化粧品の機械はたいへん高額で、高級車3台分ほどもするような機械もあるぐらい。そこでセカンドハンドのものを購入することにしました。
よりナチュラルに、よりオーガニックにというのは、前例がないものが多い
オーガニック化粧品のフォーミュラを作っていく過程において、新しい成分をドッキングさせたりしてどんな反応が起きるか、新しい分野がどんどん増えて事例がない状況なので、アドベンチャーが必要。サイエンティフィックでクリエイティブでなければいけません。
研究段階の方程式でガチガチの世界から、クリエイティブに発想していかないとものづくりはできないのです。そして大事なのは「良い原料」を使うこと。料理と一緒です。どんな原料を使っているかがとても大事。原材料名が同じでも、産地や製造者によって全然違います。そのために、原料をしっかりと検証する必要があります。原材料のクオリティはSHIGETA PARISでは絶対に譲れません。
ブランドと共に成長した30代。背負っていた荷物を手放す40代へ
30代は、重いリュックを背負いながらでも走れました。すべての過程において自分が関わることができた。しかし、40代に入ると手放さなきゃならないものが必然と出てきます。
万事が万事、確認しないと気が済まない部分に気づかされて、反対に「任せる」「委ねる」大切さに気づくことができました。
お客様に感動してもらえるようなものを、お客様の手に届けるところまで実現しようとすると、どこまでも自分が関わらなければいけない。でも私よりも得意な人がいる分野は任せるほうがいい。
実は「任せよう」と決意するのも大変でしたし、実際に任せるまで時間がかかりました。お客様の反応を気にしながら、どこからどこまで任せるのかのバランスが難しくて…。
実際に日々の仕事に取り入れて実行するまで試行錯誤しました。
次の世代にバトンタッチするとき、どんな風に社会に貢献していくかを考える
「閉経」を迎えてから女性の人生がはじまるという人もいますが、その前後から、女性は次の世代にバトンタッチすることを考えた方がいいと思っています。どういう風にバトンタッチするのが望ましいのでしょうか。
子どもたちの成長があり、どういう社会にしたいかということを、「自分の大切なこと」として考えています。もちろん仕事を通して、SHIGETA PARISブランドを通じて、どこに、どんな形で貢献できるか。それが昨今の大きな課題です。
SHIGETA PARISのセルフケアは、調和を醸成する。自己も他者もリスペクトできる社会へ
16年間、SHIGETAを育んできたなかで、女性の自立にこだわってきました。けれども残念なことに女性の地位は上がってはいません。しかしそれはあながち、予想できないことではありませんでした。
女性の悩みや相談にのっていると「こうあるべき」と悩んでいることが多く、ソーシャルプレッシャーがあることがわかります。
声をあげないことは調和ではない。「私が黙っていればいい」という不調和
自分のマインドを世間に吐露することに、何もメリットもないと思っている女性が多いように思います。これが結構根深いと感じています。
SHIGETA PARISではセルフケアすることの大切さを伝えてきました。自分で自分に触れて、自分を大事にすることの重要性です。その先にあるのが自立なのですから。
自分の本質的な部分に触れて、自分が満たされていくことが大事。自分を満たして豊かになることで調和が生まれます。例えば「嫉妬」って何ですか? 外側ばかり見て、外側を満たそうとするから出てくるものでしょう。自分の内側が満たされているならばひがまないですよね。
自分が満たされて、調和するようになり、そんな人たちがどんどん増えて行けば、豊かな社会になると思います。
自分と他人の調和が生まれていくのを、身をもって感じることができれば、自分に対しても周りの人に対してもリスペクトが生まれると思います。そうすると、お互いに自立した関係性をつくることができます。
私の今までの経験から、「自己調和」することが他人に優しい社会を作る、つまり社会貢献になると思っています。でも、人のためだけではなく、自分の心地よさのための追求が周りの人にもよい影響を広げていくということを伝えていく場所を作りたいなと思います。
▶【この記事の前編】世界のセレブに指名される女性が「自分の暮らし」を作り変えるまで
写真はすべてCHICO SHIGETAインスタグラム(@chicoshigeta)より
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