「富士山噴火の歴史から見る被害とは」3時間で首都機能が麻痺【池上彰の未来予測・後編】

2024.07.13 WORK

火山灰の影響によりインフラ機能がダウン

過去の歴史から想像しうる被害を現代に当てはめると、こんなことが考えられる。あらかじめ、リスクを知っておくことで、できる備えを今から始めましょう。

「宝永大噴火では、江戸の町にも火山灰が大量に降り注ぎました。

 

徳川家に側近として仕えた新井白石が書いた自叙伝『折たく柴の記』には、江戸でも地鳴りと地震が続き、富士山からの降灰で町は昼間でも薄暗くなり、みんな傘を差して提灯をつけて歩いたこと、多くの人が咳に悩まされたことなどが記されています。火山灰は、小田原や鎌倉で16㎝程度、江戸でも数㎝ほど降り積もったとみられています。

 

現代は街中至るところに精密機器などがあります。降灰の被害により、富士山の東側である羽田空港と成田空港は、使えなくなるでしょう。自動車も、火山灰が10㎝積もると走行できなくなります。鉄道に至っては、火山灰が0・5㎜積もっただけで運行が停止するとみられています。火山灰が少しでも積もれば、その鉄道運行システムに障害が出る恐れがあるのです。

 

火山灰が雨を含んで電線に付着すると、停電が起きる可能性もあります。
携帯電話の基地局などにも、きめの細かい火山灰が付着して、使えなくなる可能性があります。Wi–Fiも電話もつながらなくなり、通信が途絶するかもしれません。

 

国の検討会のシミュレーションでは、富士山の噴火で都内では火山灰が最大10㎝積もり、3時間ほどで首都機能が麻痺する恐れがあるとされています。

 

こうした事態に備えて、東京都も富士山の火山灰を除去する計画を作成中です。

 

個人の備えとしては、火山灰は呼吸器系や目などにも被害を与えますから、災害対策グッズにマスクやゴーグルを入れておくといいでしょう。また家の換気口につける防塵フィルターを準備しておくのもいいかもしれません」

 

富士山噴火だけでなく、地震大国でもある日本は、常に天災と隣り合わせである。悲観的にならざるをえないが、それでも、日本で生活をしていくうえでは、リスクを知り正しく備えること、が未来を希望あるものに変える唯一の方法なのかもしれない。

 

「南海トラフ」「スーパー台風」……さらなる災害と未来予測も

また書籍では、「『スーパー台風』が毎年のように日本を襲う」や「夏の甲子園はなくなり夏は日没後に外出する生活になる」などの未来の災害予測を踏まえて、日本人が最低限知っておくべき備えや知識についても紹介している。六本木ヒルズの地下には、巨大な倉庫があり、約10万食の食料や毛布、簡易トイレ、紙おむつなどが備蓄されています。災害時に逃げ込めば、これらが提供されるという都市伝説のような本当の話も!

 

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『池上彰の未来予測 After 2040』(池上彰著/主婦の友社刊)

<著者プロフィール>

1950年、⻑野県松本市⽣まれ。慶應義塾⼤学卒業後、1973年にNHK⼊局。報道記者としてさまざまな事件、災害、消費者・教育問題などを担当。1994年からは11年にわたりニュース番組のキャスターとして「週刊こどもニュース」に出演。2005年よりフリーのジャーナリストとして執筆活動を続けながらテレビ番組などでニュースをわかりやすく解説し、幅広い⼈気を得ている。また、5つの⼤学で教鞭をとる。『池上彰が⼤切にしているタテの想像⼒とヨコの想像⼒』(講談社)『池上彰のこれからの⼩学⽣に必要な教養』(主婦の友社)など著書多数。

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