50歳、更年期症状の「底」はいつ訪れますか?しんどくて耐えられません【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#12
青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。
日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。
乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「医師に聞いていいのか迷うこと」をまとめて聞くシリーズです。
【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#12
Q・症状の「底」がいつくるのかを知りたいです
こんにちは、私は50歳で、最後の生理は半年前でした。まだ閉経しているかどうかわかりません。
ご相談は、何歳ごろに「いちばん辛い」底の状態を迎えるのか?ということです。
いま私は1年前に始めた病院でのホルモン補充療法と、2年前からのツムラの漢方薬を併用しています。
私はウツウツとしてしまい、起き上がれず、家事もできない日が多くあります。本当は更年期ではなく鬱なのかもと思います。そのほか、めまいと頭痛にも苦しめられていて、HRTを始めて少しよくなりましたが、全快には程遠く、これが底ではなくてもっとつらい状態があるなら耐えられないと思っています。
(ミケさん・50歳 更年期症状の度合い/とてもつらく、耐え難いと感じることがある)
A・底の判断は難しいけれど、前の日よりよくなっていたら底は過ぎている
ミケさん、こんにちは。お辛い日々ですね。夏場は台風もよく襲来しますが、もしかしてミケさんは天候不順でも不調になるのではないでしょうか。
さて、今回は「底」のご相談ですが、これは本当に判断が難しい。
一般論でいえば、平均的な閉経の年齢である50~52歳ごろにはだいぶホルモン値は落ちていて、身体も慣れつつあることが多い。従って、更年期は閉経より前の時期のほうがしんどさを訴える人が多いんです。50歳を越えると今度は手指の痛み、高血圧など物理的な症状で来院する人が増えます。
しんどさそのものは55歳まで訴える人がいますし、最近ぼくの患者さんでは65歳で訴える人が現れました。その方は10年以上前に閉経していますが、主訴は更年期障害の症状で、加味逍遙散でいっぱつで治りました。
閉経しても女性ホルモンが完全に体内から消え去るわけではないので、このように60代に入ってもホルモンの影響で更年期っぽくなる人もいます。
さて、更年期は、この症状が出たら何期だよというような典型推移がありません。全然わかんない。でも、ミケさんはHRTで「少しよくなった」んですよね。これは朗報で、よくなりだしたらその前の日が底です。
というのも、更年期症状は二相性を見せません。二相性というのは、いったん収まった症状が再び出て、しかも2回目のほうが悪くなることです。いっぽうの更年期症状は一相性です。なんとなくよくなってきたなと思うとよくなっていき、底は大抵は1こです。ですので、HRTでも漢方でも運動でも何でも見つけて、少しよくなったなと感じたなら、もう底を過ぎています。
人間関係にストレスを抱えていませんか?心が出しているサインかもしれません
ぼくは更年期のホルモン分泌減少に身体が慣れて回復していく力を「フェムレジ」と呼んでいるのですが、このフェムレジが弱くて回復がついてこない人たちは人間関係の問題を抱え込んでいることがとっても多いなと感じています。
子どもの不登校が続いている、気の合わない義両親と同居、職場がブラック、両親が要介護など人間関係の問題が出てくると、いちど上向いた更年期症状がまた悪くなったりすることもあります。ぼくはカウンセリングの際に直球でズバリと「ねえ、亭主浮気してない?」なんて危険球を投げます。すると「浮気はしてないと思うんですが、ネグレクトというか、私のことを家政婦以下にしか見てなくて」というような本音が出てくる。「いいよ、そんな亭主殺しちゃえ、ぼくが許す」と言うと、「殺しはしませんけど…でも、ひどい話ですよね」と心の中の荷物をちょっと外に出すことができます。
昔は近所にうるさいおせっかいのオバサンがいて、こういう危険球をバンバン投げて「いいのよそんな亭主殴っちゃって」なんて言いながらフェムレジの弱い人を助けていたんでしょうね。でもいまはそういう機会がないから、昔なら社会的にできていたケアができなくなってしまった。
基本的に閉経すればラクになります。山の3分の2は越えた感じ
さて、更年期症状は、通常は閉経するとだいたい終わった感が出てきます。閉経のときが着地のイメージです。その後もいろいろ訴える人はいるものの、増えていく印象はありません。ですから、更年期症状は閉経の前のほうがつらいく、閉経すれば基本楽になると思っていていいと思います。
もちろん、例外はいくらでもいます。でも、一般論として、ひとまず症状がいま辛い人も、ひとまず閉経までがんばれ。がんばれないなら閉経させちゃえばいいです。HRTを間欠ではなく持続という飲み方にすれば基本生理は止まります。不正出血がちょいちょい続くので嫌がる人もいますが、メリットデメリットを考えて検討も可能です。
でも、ぼくは静脈血栓の治療を専門としていた経緯があり、命をとるリスクを作るHRTはあまりオススメしていない。どちらにせよ自然に閉経を待てば基本はラクになるよ、だから閉経までがんばれ。体感では閉経の前に山の3分の2くらいを越えています。
閉経後がすごくつらいって人は、そんなにはいないのですが、いることはいます。この中には甲状腺機能低下症、慢性疲労症候群、ALSなど筋肉の病気、がんや白血病などまれな難病が隠れていることがあるため、閉経してもしんどい場合は一度は医者に行ってください。隠れた病気がないかをルールアウトするのが医者の仕事です。
ただし、どんな名医でも1回スポットで行っただけではデータがなさすぎて診断がつきません。医療は点ではなく、線で見るため、例えば3か月程度の期間でどんどん悪くなっていくようなら何かが隠れている可能性がぐんと上がります。40代に入ったらクリニックはあまりあちこち迷わず、ある程度頼れるところを早めに探して、固定して長く通ったほうがいいです。
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お話/新見正則医院 院長 新見正則先生
1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。
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