52歳。ホルモン補充療法を続ける限り生理が続いて「閉経しない」のでしょうか?
青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。
日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。
乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「医師に聞いていいのか迷うこと」をまとめて聞くシリーズです。
【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#14
Q・ホルモン補充療法を続けている限り、生理はずっと続きますか?
先生こんにちは。私は4年前、48歳でホルモン補充療法(HRT)を始めました。服用から2日目で悩んでいたホットフラッシュは完全になくなりました。40代に入ってから排卵日や生理前後に頭痛が起こる事があり、処方されている漢方薬を飲んできましたが、効き目は定かではありません。 あまりに頭痛が酷い時はいまもロキソニンを服用しています。
さて、お伺いですが、3ヶ月こなかった生理がHRTを始めてから復活しました。私はこのままHRTを続けていると閉経しないのでしょうか? そして、閉経したらこの頭痛は治るのでしょうか?
(かけはしさん・52歳 更年期症状の度合い/不調が出ることもあるが、なんとか乗り切れそう)
A・ずっと続けることをお勧めはしませんが、飲んでいる限り生理は続く可能性が高いです
こんにちは。前向きなご質問の内容から、かけはしさんが上手に更年期と折り合いをつけていることが伝わってきます。
さて、ご質問の件ですが、まず、4年も飲んでいるなら、HRTをいったんやめてはどうかという時期です。「いつまで続ければいいですか」というご質問もよくいただくので判断をお伝えしますが、「やめようと思ったらやめて、ひどくなったらまた再開すればいい」です。
そもそも血圧の薬のようにずっと飲んで値を保つ必要があるもの以外は、薬はある程度飲んだらやめたほうがいいのです。見極めは「薬が余り出したら」です。漢方でも何でもそうですが、元気になってくると薬が余ってくるので、それがやめどきです。よくなったサインだと思ってください。
頭痛のご相談もいただいていますが、もともと片頭痛を持っている人がHRTを始めると頭痛がひどくなるリスクが報告されています。経皮剤より経口剤のほうが片頭痛の増悪頻度が高いとも言われます。この点からも、長期の投与はメリット・デメリットを考えたほうがいいとぼくは考えます。
ただし、閉経やHRT中止によって片頭痛が止まるかどうかはわかりません。もしホルモンと関連のある頭痛だったなら閉経後数年で止まる可能性があるでしょう。更年期トラブルのほとんどはこのように閉経後しばらくしてからやっと「関係があったか」の答え合わせが可能になるため、判断が難しいのです。
子宮は年をとらないので、出血はそのままずっと続く可能性もあるものの…
HRTを続けている間、ホルモン剤を止めると消退出血(しょうたいしゅっけつ)が起きます。血中のエストロゲンと黄体ホルモンが減少することで子宮内膜が剥がれ落ちる、生理と同じ仕組みの出血です。一般には生理よりは軽いことが多いです。
閉経前からHRTを始めた人の場合、ピルのように3週に1週など時期を決めて薬を止めて消退出血を起こし、子宮内膜を更新してがんを予防します。閉経後数年たってからのHRT開始の場合は子宮内膜の更新の必要はなく、パッチやジェルなどを連続で使えます。
実は年を取るのは卵巣だけで、子宮は年を取りません。ですから、出産だけならば70歳近くまで可能な場合があります。消退出血も年齢と閉経後年数によってさまざまな出現パターンがあり、出血量はまちまちながら、閉経後に補充を開始した場合でも50歳以下では90%、60歳以降も25%に見られます。逆に言えば、補充していても75%は出血が止まります。
HRTに悩んだらいったん止めて、ぶり返したら再開すればいいのです
ぼくは、乳がんと子宮がん、そして血栓のリスクがある以上、HRTはどこかでやめるものだと考えています。前述の通り、続けるかを悩んだらいったんやめて、その結果症状がぶり返してひどくなったら再開すればいいのです。
厳密な規定ではないですが、保険診療でのHRTは5年がひとつの目安です。例外は何でもあるため一概には言えませんが、50歳未満で閉経した人ならばHRTは50歳まで、60歳未満で閉経した人ならば60歳までというのも基準です。60歳を越えてからは慎重投与となります。だらだらと飲み続けることをお勧めできるタイプの薬ではありません。
もし「生理があったほうが若いって感じだから」というような動機でしたら、いったん止めて体調が悪くならないかどうかチェックしてみてもいいと思います。ぼくの経験では案外と止めても大丈夫なもので、ここで体調が悪くならない人が真の意味で若い人だと思います。
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お話/新見正則医院 院長 新見正則先生
1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。
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