年下男子に突然「一緒に暮らしましょうか!」と言われたら…【年下小説・あなわた#8】

【小説・あなたのはじめては、わたしのひさしぶり  vol.8】

これまでの話

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第7話

 

 

かわいいのは……

 

高坂くんと行った犬カフェは、素敵なところだった。

入るなり、10匹以上の小型犬に、私たちは囲まれた。

チワワやプードル、それからマルチーズ。

人懐っこく抱っこをせがむ犬もいれば、恥ずかしそうに遠くから見つめてくる犬もいて、性格がそれぞれ違って、どの子も本当に愛おしい。

 

「おいで!」

高坂くんは近づいてきたプードルを膝の上に乗せて、かまっている。

会社では見たことがない、笑顔の彼。

犬の頭を撫で、何やら話しかけている、優しそうな彼の顔を、私はぼうっと見つめていた。

 

「犬と遊ばないんですか?」

不思議そうに、私のほうを見た彼の顔は、穏やかで、幸せそうだった。

こんなほんわかした顔が、できる人だったんだ。

 

「ドリンク、頼まないと」

「ああ、そうですね。じゃあ僕はアイスコーヒーで」

彼はそう言ってまた、プードルに顔を落とした。

彼と私の実家で飼っているのと同じ、茶色の毛だったので、親近感が湧いているのだろう。

 

連れて帰りたい

 

しばらくして私たちは、ここがどういうカフェなのか、わかってきた。

ここにいる可愛い犬たちは、どの子も、里親を探しているのだという。

何らかの事情で保護された犬たちだったのだ。

 

飼い主さんの引越しや病気で飼えなくなってしまった犬や、ブリーダーさんが廃業するということで、行き場がなくなってしまった犬。

 

この子たちは、新しい家を探している。

そう知った時に、胸が熱くなった。

犬が好きなので、なんとかしてあげたい、そんな気持ちでいっぱいになる。

高坂くんも、同じだったらしい。

 

「連れて帰ってあげたいな……」

そうつぶやいて、プードルの頭を撫でている。

だけど、彼も私も、ペット禁止のところに住んでいるのだ。

 

「ごめんな……」

彼は申し訳なさそうに、プードルをぎゅっと抱き締めた。

今日の高坂くんは、よく喋る。

といっても私にではなく、プードル相手にだけれど。

 

いっしょに……

 

カフェには2時間近く、いたと思う。

その間、高坂くんとはたくさんのことを話した。

ほとんどが、犬がらみの話だったけれど、芸の教えかたなど、色々なことを知っているので楽しかった。

 

「実は、犬に関わる仕事をしたいと思ったことがあるんです。獣医や、トリマーや、盲導犬訓練士とか」

「すごく向いてる気がする! どうしてならなかったの」

「好きだったからこそ、無理だなって思ったんです。だって、犬たちの死や別れを経験しなくちゃならないですよね。つらくてやっていけそうもなくて」

 

彼は目を伏せ、しばらく考えた後で、顔を上げた。

「引っ越したいですね! ペットOKのところに!」

「そうね」

私も頷いた。

 

「……いっしょに暮らしましょうか!」

唐突に、彼は切り出してきた。

「……えっ!?」

「一軒家借りるとか、いいと思いませんか?」

 

犬のことになると気持ちが一気に盛り上がるらしい。

「ほら、シェアハウスって言うんでしたっけ。犬好きな何人かで一戸建て借りて、犬の里親になれたらいいと思いませんか?」

そういうことか、と私は笑った。

同棲しようと言われたのかと、思った。

 

そして、この日を境に、私と高坂くんの間には、不思議な暖かさが流れるようになっていった。

 

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(つづく・第9話は17/7/11火曜日 20:00公開)

 

 

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